楽園の地図60号 カジノじゃないマカオを楽しもう
City view from Monte do Forte, Macau
もくじ
はじめに
今週の楽園 カジノじゃないマカオ(マカオ)
今週のオアシス TERRA COFFEE HOUSE(マカオ)
今週楽園で読みたい本 「人生を変える南の島々」シリーズ(世界の南の島々)
今週楽園に行けない人のために 映画・ダージリン急行(ジョードプル/インド)
おわりに
はじめに
本を読む効能について
今週は東京でいくつかの用事を終えたら風邪をひいてしまい、おとなしくホテルで本を読んだりしてる間に終わってしまいそうです。面白いことに、風邪の時は本を読んでもなかなか速度が上がりません。集中力が保てないからでしょう。やっぱり本を読むにも、それなりに体力というか気力を使うようです。
子供の頃、学校の先生も親も読書をしなさいとよく言われました。今もきっとそうだと思います。私の子供の頃は、本=素晴らしい、漫画=ダメ!って感じの教育でしたが、これは子供ながらに疑問でした。たとえば、『漫画でわかる世界史』みたいなものは漫画だけど勉強に役立つし、文章のみで構成された本のなかでも、教育上あんまりよろしくなさそうなものも含まれています。今で言えば、Youtubeで簡単に本の要約を紹介してくるチャンネルは多数ありますが、あれを見ることと、原本を読むことの間にはどれぐらいの違いがあるのでしょうか? あるいはXやInstagramの投稿を見ることだって『読む』という行為の範疇だとは思いますが、あれは読書とどう違うの? なんで本を読む行為は、それらよりも少し位が高い作業だと思われているのでしょうか。
私が思うに、読書はそれなりに集中力を持続する必要があるため、瞑想的な意味があるのではないかと思っています。たとえば今週の私のように風邪をひいて元気がない時、何か心配事があるとき、何かに焦っている時、文字を追いながら読書をしても内容がまったく入ってこない時がありますよね? あれは瞑想でいうところの呼吸が浅く落ち着かないときにそっくりです。どうやら、読書をしているとき、人はゾーンに入ってる瞑想状態なんじゃないかと思います。不思議なことに、Instagramの長文は、確かに長文ではありますが、読むのに集中力が必要なことはあまりありません。そう考えると、読書が好きな人同士が感じる独特の連帯感(本が好きならきっと穏やかでいい人だろうな的なやつ)も、納得がいくところです。
さて今週は、世界一のカジノアイランドであり、ポルトガルの香りを残す中国、マカオを紹介します。カジノをしない人にもおすすめのマカオがたっぷり。
今週の楽園 カジノのないマカオ
マカオといえばカジノのイメージです。実はマカオを作ったカジノ王の歴史については初期の楽園の地図で触れているのでカジノに興味のある方はそちらをみていただいて、今回はカジノのないマカオを紹介したいと思います。
マカオは歴史を紐解くともちろん中国の王朝の領土でしたが、16世紀に当時は世界中の海を支配していたポルトガルの居留地となるところから、港としての歴史が始まります。中国政府の明はポルトガルが中国に進出してくるのを嫌がりましたが、のちに近海の海賊をポルトガルが退治したことで、お礼のためにマカオの地がポルトガルに与えられるようになるわけです。ちなみに、この頃の世界は、スペインとポルトガルが世界を二分していました。新大陸(北米、南米)に力を入れたスペインに対し、ポルトガルはユーラシアの支配権を強めたわけです。この頃のポルトガルは国や地域そのものを支配するよりも、自分たちの港を各地に作って海を支配しようとしたわけです。その結果アジアでも、インドのゴアをはじめとした海岸地域、マレーシアのマラッカなど、ポルトガルが支配する港を各地につくりました。そして、その東の終着点が、中国のマカオだったわけです。まだオランダやイギリス、さらにはアメリカが勢力を増やす前の話です。
ですのでマカオには、中国文化と同様、ポルトガル文化も多く残ったわけです。
セナド広場。ポルトガルの街並み、なんだけど綺麗すぎてテーマパークっぽくもある。
たとえば現在もマカオ半島の中心部であるセナド広場を歩くと、ここがポルトガルであるかのようです。ちなみにわたしはマレーシアのマラッカも訪れたことがあり、あそこもかつてポルトガル領で、中国人も多く駐留したので状況は似てるのですが、その後統治者がたくさん変わるマラッカと違い、マカオは20世紀の終わりまでポルトガル領だったこともあり、とても綺麗にポルトガル風の街が保存されています。
そんなマカオでは、せっかくならポルトガル料理を食べたいですよね。私のおすすめのレストランはここです。
Tapas de Portugal(葡薏園)
少しいつも紹介するレストランより高級な雰囲気がただよってますが、タパスなので安心してください。タパスとはスペイン語でおつまみみたいな意味で、ポルトガル語ではペティシュコシュなんて名前で呼ばれているようですが、私が思うにペティシュコシュとタパスはそれほど違いがあるとは思いませんでした。
タパス、うまいし、かわいい。食べやすい。
たぶんカジノが好きでなければ、マカオに1週間も滞在するような人はいないと思います。せいぜい2泊とか、あるいは1泊するで帰る人も多いと思われます。短い滞在の中でも、ぜひ一食はポルトガル料理を食べたいところです。
マカオは大まかに「島」と「半島」の2つに別れます。半島はマカオ半島ですが、島はタイパ島とコロネア島という島が「あった」のですが、カジノで儲かって開発が進むも狭い国土なので開発の余地を増やすために、マカオ政府はタイパ島とコロネア島の間の地域を埋め立て、コタイ(コロネアとタイパを合わせた地名)という地域を新たにつくりました。結果として二つの島はくっついて、今は一つの島のようになっています。
ところで、香港の友人と話していてなるほどと思ったのですが、香港もマカオも似たような経緯の街なのに(香港は近年までイギリス領、マカオは近年までポルトガル領)、香港市民はその後中国政府の支配に反発して抗議デモを行いますが、マカオで反政府デモが起きた話は聞きませんよね。これって不思議じゃないですか。どうやらマカオの人はあまり自分たちを中国とは違う存在だと考えておらず、ざっくり中国人だと考えているようです。ポルトガルの人たちは自分たちの船を自由に中国に停泊させて貿易したかっただけで、後から来たイギリスのようにこの場所をしっかり自分たちのルールで統治しようとは考えなかったのかもしれません。
そんなお茶目な支配者ポルトガルですが、ポルトガル文化を感じたいのであればマカオ半島側に宿を取ることをお勧めまします。もちろんタイパやコロネアにも古くからの街はありますが、大半が後から新しく開発された場所です。一方、マカオ半島は古くからの市街地で、歴史あるカジノとともに、ポルトガル領だった頃のマカオを感じることができるからです。
マカオのガイドブックを読むと必ず大きな写真で掲載されてるセント・ポール天主堂跡ですが、なぜか私はマカオに縁があって3回ほどここを訪れていますが、お世辞にも感動できるような場所ではありません。ファサードといえば聞こえはいいですが、舞台の書き割りのように、薄っぺらい壁があるだけです。かつてはこの先に大聖堂があったようですが、残念ながら現在ではその入り口部分しか残っていません(火事で消失したそうです)。現在のポルトガルの地位を考えればわかるように、かつて大国であったポルトガルの影響力はどんどん下がってしまい、ポルトガルにとってはマカオの遺跡を再構築する余裕などなかったのでしょう。一方、中国側としてもキリスト教にまつわる宗教施設をわざわざお金をかけて再建設する必要がなかったのでしょう。こうしてには、中途半端な形で天主堂が残ることになりました。
私のおすすめは、天主堂跡の横にある大砲台、モンテの砦です。ここは薄べったいマカオ半島のなかで小高い丘になっていて、そこに砲台が残っています。
モンテの砦の砲台。今やマカオ中に高層ビルが建って、この地から海が見えなくなった砲台は、海賊ではなくグランドリスボアという有名なカジノホテルを狙ってるように見える。
砲台は、合戦マニアでもないと楽しめないとは思いますが、それよりもここは景色が素晴らしいのです。マカオ半島を一望できるほか、遠く対岸の中国まで見渡せます。
モンテの砦から見下ろすマカオの街並み。対岸には中国(珠海市)。中国側のほうが建物が新しく、高層ビルが多い。
マカオの名物といえばやはりカジノ、そしてカジノをやらない人でもカジノに併設されてるモールやショーなどに夢中になるかと思いますが、こうやって少しマカオの歴史に思いを馳せるのもいいんじゃないかと思います。
あれほどハリボテだとバカにしていたセント・ポール天主堂跡ですが、3回見て今思い返すとなぜか無性にまた見たくなってきました。浅草の雷門だってただの門と提灯ですが、見慣れてくると愛着がわいてきます。マカオはそれほど観光地として考えると少し弱いですが、愛らしい街であることは間違いありません。
もちろんこんな渋い観光をしないでも、カジノ巡りも大変楽しいです。
ド派手なライトアップが施されたThe Londoner Macao。ロンドンの時計台(ビッグ・ベン)そっくりの塔も。
このようなド派手なカジノ施設も、マカオの歴史をおさえてから見ると、また格別です。
今週のオアシス TERRA COFFEE HOUSE(マカオ)
というわけで、今日はオアシスのコーナーもマカオから紹介しましょう。マカオでおすすめのカフェは、TERRA COFFE HOUSEです。マカオ半島のランドマーク的な古いカジノ、グランドリスボアから徒歩圏内(まあマカオって全部徒歩圏なんですが)ですが、このあたりは急に裏道感が出て、ヨーロッパの古い街っぽい曲線的な坂が続く道の途中にあります。
ここのおすすめはなんといってもオールデイコンボという名称のプレートです。1日中頼めるようなので、のんびり起きてブランチにいかがでしょうか。アボカド満載のプレートとコーヒーがセットでついてきます。遅い朝ごはんにぴったり。
アボカドたっぷりのプレート。
マカオって極端な街で、裏通りを歩くとあまり人通りが多くなく、カジノ以外は大きな産業もないので、ひなびた観光地となっています。一方、メジャーな観光地(さっきの聖ポール天主堂とか官也街とか)は、主に中国本土からの観光客でごった返しています。カジノはカジノで目を見開いてギラギラした人が多いので、これはこれは極端です。
私はいつも、適度な人出(人口密度)を求めています。新宿駅前や渋谷駅前の人混みは嫌だけど、かといって人がいなすぎるのは寂しい、という天邪鬼な性格です。そんな私が思う、マカオでちょうどいい場所がここです。このお店は『いい感じの距離感で、楽しそうな表情の人がいる』という点が素晴らしいと思います。人口60万人の小さな地域(国ではない)ですが、地元出身の芸術家を応援するコンセプトらしく、カフェはギャラリーも兼ねていました。
ギャラリー兼カフェ
私が行った際の展示は、思い出の家族写真のような写真が並んでいて、少し前のマカオの海岸が映ってました。私はアボカドをほうばり、ちょうどいいバランスのコーヒーを飲んで、そして少し前のマカオのことを想像していました。このお店、近所にあったら毎日言っちゃうと思います。もしマカオに行く機会があったら行ってみてね。
TERRA COFFE HOUSE
(Google Map)
(Instagram)
(Tripadviser)
今週楽園で読みたい本 「人生を変える南の島々」シリーズ
人生を変える南の島々シリーズ。写真は「南北アメリカ&ハワイ編」より。Kindleなら千円台で読めちゃう!
「南の島」をテーマにした(読書にも適切な)ガイドブックです
このメルマガを初めてからというもの、ガイドブックをめちゃくちゃ読むようになりました。ガイドブックといえば、旅行に行く前、忙しい人であれば機内でふわっと読むものであって、旅にも行かない場所のことを、ただ読んでいる人はあまり多くはありません。でも私は、写真やイラスト、地図なんかもふんだんに使われているガイドブックについて、まるで図鑑でも見るかのように読むと案外楽しいことに発見しました。なかには物足りないガイドも多いのですが、今後はガイドブック書評家としてニッチな活動ができればと思ってますので、私に仕事があればください。
ところで、日本でいちばんメジャーなガイドブックといえばご存知「地球の歩き方」です。地球の歩き方は売れてるだけあって非常にバランスが取れていてよくできた本だと思います。私はガイドブックを評価するとき、同じ場所の「地球の歩き方」より優れている点、劣ってる点はどこかと考えたりします。日本語のガイドブックの基準となっている本だと思います。ですが、すこしだけ不満もあります。たとえば、空港から市街地まで行く方法についてかなり詳細に書いていますが、現代であれば正直なところスマートフォンがあれば、ほとんどの地域で公共交通機関を使った最良の行き方を教えてくれるし、タクシーしか交通機関しかない場所でもUberやGrabなどの配車アプリを使えばボラれる心配もないし、正直現代においてはあまり必要ないページだと思います。どんな空港であっても、空港であれば英語のインフォメーションがない空港なんて見たことがありません。それらがすべて不自由な人は、おそらく団体旅行をしたり、より詳しい人と旅行する人が多数であって、つまり誰について書かれている情報なのかよくわかりません。また、ホテルのページにもかなりのページ数が割かれていますが、多少の情報は必要だと思いますが、現代ではアプリで取る人がさすがに過半を超えていると思いますので、このページも分厚くする必要がないと個人的には思います。遺跡や博物館にかなりの枚数が割かれていますが、それも必要ですが現代の旅行者としては市場とかスーパーマーケット、現地の人の暮らしの情報をもっと増やしてほしいと感じます。ただ、スマホやネットのない時代から長年同じ編集方針で続けているガイドなので、これはこれであまり変更する必要がないのかなとも思います。一方で「aruco」とか「ことりっぷ」は、写真などヴィジュアルで訴えてくるものが強く、これはこれで気分を高めてくれるものではありますが、情報として見た時に、既存のガイドブックから要素を削って再編集したものなので、少し物足りないのも事実です(これは、ガイドブックを読書として楽しむという不思議な趣味を持った私の意見です。雰囲気を味わいたい人にはあれで十分なのだと理解しつつ。。)。一方で紀行文のようなものは多数出版されていますが、これはこれで読み物に主題が置かれていて、本当にその国を知りたいときにはあまり役立たないものです。
そんななか、私が思うに日本語の旅行本でバランスがいいと感じるのは、雑誌の「Transit」シリーズ、そして作家の高城剛さんが発行しているガイドブックです。タイトルとしては「人生を変える南の島々」シリーズ、「NEXTRAVELER」シリーズなどがあります。今回紹介するのは、「人生を変える南の島々」シリーズ。これは日本を代表する旅行作家、映像クリエイター、ハイパーメディアクリエイターこと、高城剛さんが実際に見てきた旅行先の中で、南の島というカテゴリに絞って紹介した本です。たとえばアジア編ではこのような島が取り上げられています。
人生を変える南の島々、アジア編より。東南アジアのさまざまな南の島が紹介されています。
タイのプーケット島やサムイ島、インドネシアのバリ島のようなメジャーどころから、インドネシアのサーファーだけに知られる幻のニアス島(インドネシア)、美しい海岸線を持つ秘境、カランガマン島(フィリピン)、近年急激に開発がすすみ観光地化するフーコック島(ベトナム)など、ちょっと変わった滞在先も紹介しています。これらは、既存のガイドでは、それぞれの国のガイドを見る必要がありますが、国とかどうでもいいからアジアの南の島に行きたいという人にはこれほどよく編集されたガイドはないと思います。
インフォメーションとしてもよくまとまっていて、最低限必要な情報(使用通貨や言語、気温、降水量など)がコンパクトにまとまっているほか、島ならではの地域に伝わる風習や奇才、個人的に体験したエピソードなどにかなりの行数が割かれているので読んでいて飽きませんし、その島のイメージが手に取るようにわかります。
マレーシアにランカウイ島という素敵な島がありますが(楽園の地図の過去回でも紹介しました)、ここから目と鼻の先にリペ島というより小さくて素敵な島があります。ここはホテルも多く、ビーチも綺麗で、実は知る人ぞ知るかなり充実した観光地です。しかし、リペ島のことは地球の歩き方にはマレーシア版にもタイ版にも載っていません。リペ島はランカウイ島から船で行くのが最もポピュラーな行き方なのですが、ランカウイ島はマレーシア、リペ島はタイに属していまして、国別に情報を掲載している地球の歩き方にとって、2カ国を跨ぐことから情報として取り上げづらかったのだと思います。このような国別に情報を編纂する欠点をこの本は補っている良書だと思います。
どこでもいいから南の島に旅したい!という方ならぜひご一読あれ。きっとあなたにぴったりの島が見つかります。現在、日本編(沖縄と奄美)、アジア編(東南アジア)、ヨーロッパ編(地中海の島多し)、南北アメリカ&ハワイ編(その名の通り。カリブ海の小島の情報が充実)が発売されてます!
今週楽園に行けない人へ ダージリン急行(ジョードプル/インド)
オシャレな映画監督が、カオスのインドを舞台にロードムービーを撮ったらこうなります
ずいぶんこの映画について書くのが遅れてしまった。そんな気分です。旅に関するメルマガで映画紹介を書いていますが、この映画ほど旅っていいなと思わせる映画はないと思います。舞台はインドの西側、ラジャスターン州。なかでもジョードプルという都市で大部分が撮影されています。ちなみに、インドの東側、ネパールとブータンあたりに紅茶で有名なダージリンがありますけど、映画のタイトルはダージリン急行ですが、こちらはこの映画には関係がありません。
インドにルーツを持つ父の死をきっかけに、いがみあっていた三兄弟が再び集結することから物語は始まります。似てるようで似てない、似てないようで似てる、そんな三兄弟が、インドの地で珍道中するに連れ、兄弟の絆を取り戻していく、なんていうと感動作に聞こえるかもしれませんが、まるで現実のインドのように不条理、脱力感があるため、よくある感動作では終わってません。この映画が大好きなのは、大味の感動があるわけではなく、心に乗っている荷物を少しづつ少しづつ下ろしていくような、そんなシーンが満載だからだと思います。これって映画というよりも現実に近いと思うんですよね。どういうことかと言うと、たとえば仲が悪くなった人たちが友情を取り戻すときに、何か奇跡的な、感動的なことが起きて再び仲良くなる、なんてことはあまりなくて、少しづつ、少しづつ、諦めにも似た「ま、いいか」が積み重なって、ほんの少しづつ、広大なインドをゆっくり進む列車のようにちょっとずつ友情って改善していくものではないでしょうか。現実に寄り添ってるという意味でこの映画は誠実だと思います。性格もバラバラな彼らの共通した思いは失踪した母親に会いたいという気持ちで、それが彼らを憎しみや冷笑から解放してくれます。
監督はあのウェス・アンダーソン。ウェス・アンダーソンといえば、『グランド・ブダペスト・ホテル』『アステロイド・シティ』なんかで有名ですが、ポスターを部屋に貼るとおしゃれな人だと思われる映画監督としてはTOP3に入ると思います。もちろんこのダージリン急行のポスターも最高です。ウェス・アンダーソンのキャリアの中では、比較的初期に撮られた映像で、わたしが思うに彼の作品の中でもこの作品はとびきり肩の力が抜けていて、それがゆえに本人のメッセージが比較的ストレートに表現されてる作品とも思えます。彼の他の作品を見て難しいと思った方は、よかったらこのダージリン急行を見てみてください。逆にダージリン急行が面白くなければたぶんウェス・アンダーソンとは馬が合わないような気がします。彼の中では比較的大衆的な作品(つまり、エンタテインメントしてる作品)だと私は思います。
この作品が見やすいのは、先述のように肩の力が抜けている上に、舞台のインド、ジョードプルがとっても魅力的な街だからだと思います。ジョードプルは青色の建物が多くあるブルーシティと呼ばれる都市ですが、青い都市だけじゃない魅力を余すことなく伝えていると思います。
ところで、ウェス・アンダーソンはおしゃれポスター監督だと書きましたが、とにかくあらゆる対象をおしゃれに撮ってしまう人です。ここでいうおしゃれの正体はつまり、『人の手垢がついてない感じ、体臭を感じさせない人工物っぽさ』ってことだと私は思うんですよ。いっぽう、舞台となっているインドという国は、とにかく『手垢つきまくり、体臭ただよいまくりカントリー』なわけで、この対極の組み合わせがこの映画作品の最大の魅力だと思います。結果として『こんなにおしゃれに見えるインドの映像は初めて』『こんなに泥臭い作品に見えるウェス・アンダーソンは初めて』が実現していて、だからこそ私は大好きな映画なのかなって思ってます。いつかジャイプールに行ってみたいです(まだ行ったことない)。
おわりに
船長「なあなあ、お箸って最強だと思わない?」
助手「どうしたんですか、急に」
船長「和食や中華は箸だろ。でも、他のものもだいたい箸でいけるんだよ。たとえばスパゲッティ。あれ、日本人なら箸で食べた方が楽だろ?」
助手「確かに家ならパスタって箸で食べる時もありますね。でもピザは手で食べたくないですか?」
船長「ピザも手が汚れるだろ? 箸なら汚れないよ」
助手「ど、どうやって」
船長「まずはピザの一切れを箸で二つに折り畳んで、んでそのまま口に放り込む。味付けのりで米をまく要領でくるっと巻く感じ」
助手「ま、まあピザは箸で食べれなくもなさそうですね。じゃあドリアとかグラタンはどうです?」
船長「あんなのいちばん箸でどうにでもなるじゃない」
助手「グラタンを箸で食べたら茶碗蒸し食べてる気分になりますよ。。じゃあステーキは?」
船長「ステーキも箸だよ。一気に掴んでがぶって」
助手「ステーキはナイフがないと硬くて食い切れないですよ」
船長「いや、箸でつまんで歯で食いちぎる」
助手「クレイジージャパニーズ。。。」
船長「ほら、すべての料理は全部箸でいけるんだよ」
助手「あ、あれはどうです? カレー。これは絶対スプーンがいいですよ」
船長「カレーか・・・。カレーはまず、ルーのおかずを箸でつまんで食べて・・・」
助手「ルーの中身をおかず扱いしないでください。煮物じゃないんだから」
船長「や、カレーは煮物だろ」
助手「た、確かに。言われてみれば、カレーは煮物だ」
船長「で、スープだけになったのを米かナンに染み込ませて、そのまま箸で食べる」
助手「なんかカレー食べてる気にならないですね。。スープはどうです?」
船長「味噌汁もお箸だから余裕だろ。スープなんてお椀に口つけて飲んじゃえばいいんだよ」
助手「もはやお箸すら使ってない。。。あ、そうだ。ハンバーガー!」
船長「ハンバーガーはたしかにお箸では難しいな。まずは一回解体して、ハンバーグを食べて、レタスを食べて、ピクルスつまんで、、最後にバンズにお箸をぶっさして食べる」
助手「船長。そんな無理してお箸で食べなくてもいいんですよ」
船長「最後に付け合わせのポテトは手でつまむ」
助手「だったら最初から手でハンバーガー食べてください!」
船長「あ、そっか」
(つづく)
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