楽園の地図138号 予定してなかったソウル旅(前編)

Midnight cafe in Apgujeong, Seoul, Korea
もくじ
はじめに(孤独な人の味方でいたい)
今週の楽園 ソウルに行くつもりじゃなかった(前編)おすすめの滞在先・韓国外国語大学前
今週のオアシス COMPLETE COFFEE (韓国外国語大学前/ソウル/韓国)
今週楽園で聴きたい音楽 Untuk Dia/SleeQ feat. Najwa Latif(クアラルンプール/マレーシア)
今週楽園で読みたい本 台湾夜市大全、三文字 昌也 (台北/台湾)
おわりに
はじめに
孤独な人の味方でいたい
時折、最初の目的に立ち返ることは、旅においても人生においても必要なことです。
なぜこの会社で働くのか。なぜ痩せたいのか。なぜ英語を学びたいのか。こうした問いを突き詰めていくと、やがて「自分は何のために生きているのか」という大きな問題にぶつかります。
さて、私はなぜこのメールマガジンを発行するのでしょうか。
日々大量の時間を費やし、経済的にはほぼ意味のない行為を繰り返すのはなぜなのか。経済的なメリットがないという意味では、ショート動画を眺めて過ごす一日と変わらないのかもしれません。つまり、膨大な無駄を生きているのかもしれない。
私がこのメルマガを発行する理由。それは意外かもしれませんが、孤独を癒したいということです。
私は若い頃に起業し、経済的に成功しました。そして今日、その会社は終わりを迎えつつあります。若い頃からの蓄積があるため、経済的には恵まれています。日々働かなくても生きていけるし、下手をすれば、一生働かなくてもいいかもしれない。
それはとても羨ましい状況だと思われるでしょうし、実際、私も恵まれていると思います。
しかし、お金を持つというのは、それなりの精神力を必要とします。
大金を稼いだ芸能人がギャンブルで財産を失う光景をよく見ます。他人から見れば意味がわからない行為ですが、私には少しわかる気がします。人間は必ずしも、自由で豊かな状態に置かれれば幸福になるわけではありません。むしろ、何かに追われている方が精神的に安定する人もいる。不自由な状況の方が楽だというのも、ある意味で人間らしいのです。
経済的な自由とは、裏を返せば、何をして生きるのかを自分で決めなければならないということです。働かなくてもいい、誰からも命令されない、何をしてもいい。そんな状態は、案外、人間の精神を壊す可能性があります。
実際、そのことに気づいたとき、私の精神はかなり不安定になりました。最近よく言われるFIREの弊害という話ではなく、引退したお爺さんが急に老け込んでしまう、あれと同じです。
多くの人は人生のある段階で、家庭を築いたり、子どもを育てたりします。子育ては人間にとって大きな営みであり、膨大な時間と労力を必要とします。それは同時に、人生に明確な役割や目的を与えてくれるものでもあるでしょう。
そして私は、幸か不幸か、子どもがいません。
子育ても一生飽きなそうな、楽しそうな営みですが、私にはそれ以上に夢中になれることがたくさんあります。そのためには、なるべく稼働のかからない形でお金を増やし、健康を維持し、世間と適度に距離を取る必要があります。
例えば旅です。旅を続けるには、お金と時間と健康な肉体が必要です。このうちどれか一つが欠けても、自由に旅をすることはできません。
そして、この三つを確保するためには、どうやら他人と関わりすぎてはいけない。
仲の良い人が増えれば飲み会が増え、付き合いが増えます。お酒を飲めば健康を害することもあるし、時間もお金も失います。もちろん人付き合いにはそれ以上の価値があるのでしょうが、私にとっては、そこに費やす時間をもっと夢中になれることに使いたい。
世間の常識とも戦わなくてはいけません。
大量のサプリメントを摂取したり、お酒や加工肉や糖を避けたり、必要な食料を確保するために大金を払ってUber Eatsに配達してもらったり。働ける能力があるのに働かなかったり、子どもを持たない人生を選んだり。
それらは、とても孤独な決断です。
他人には奇異に映ります。でも、すべては私の夢のためです。
こういうことを吐露するのはクレージーかもしれません。私にも人並みの感情があり、孤独がつらい日もあります。無理解もつらい。
仕事や子育て、健康についての悩みは、多くの人と共有できます。もちろん、それぞれに他人には理解されない苦しみがあるでしょう。それでも、私の抱える悩みは世間の常識からずいぶんかけ離れていて、なかなか想像してもらえないものだと思います。
だけど不思議と、書いている時間だけ、孤独は薄れます。
それは、架空とはいえ、読者との対話だからです。本当に読んでもらえているのか、つまり実際に対話が成立しているのかどうかは、ここでは問題ではありません。執筆とは突き詰めれば、自分自身との対話でもあるからです。
そして、そうやって生まれたものが、誰かの癒しになることがあります。
多くの人間は、程度の差こそあれ、他人からの無理解に傷ついています。自分の生き方を理解してもらえなかったり、他人には説明できない悩みを抱えていたり、そもそも自分が何に傷ついているのかさえわからなかったり。
私はただ旅について書いたり、映画について書いたりしているだけです。何かを教えたいわけでも、正しい生き方を示したいわけでもありません。
だけど、そんな文章が、どこかにいる誰かの孤独に寄り添うことがある。
まだ名前のないあなたの傷を癒すという確信があり、私はこれを続けています。
それでは本編です。
今週の楽園 ソウルに行くつもりじゃなかった(前編)おすすめの滞在先・韓国外国語大学前
ここのところ仕事の関係で、中国本土によく行きます。この前は1ヶ月ぐらいかけて各地を回ってきましたが、何度も同じ場所に行きたくなるわけではなく、中国はとにかく広いので、初めての場所を巡っているだけでも時間がかかってしまうわけです。
私はこう見えて、世界中のすべての場所に興味があります。しかし、世界中のすべての場所に興味を持つということは、理論的には世界中のどこにも興味がないことと同じになってしまいます。絵を全体で見るということは、すべての細部を見逃すことでもあるからです。そんなわけで、まずは自分の近所である東アジアと東南アジアに研究範囲を絞っていますが、いつかはもっと広げていきたいと思っています。そして今は本の仕事の関係で中華圏に行ってる。
でまあ、次号からまたしてもしばらく中国本土の話題が続くのですが、ここでちょっと休憩。今回はソウルからお届けします。
実は中国から帰国する際、日本の連休と重なって帰国便が異様に高くなってしまったので、ソウル経由にしたのです。ところが今度は、ソウルからの帰国便が成田空港の交通麻痺の影響で欠航になってしまい、意図せず5日間ぐらいソウルに滞在することに。
本日は、そんな予定外のソウル滞在のお話です!
◇
というわけで、7年ぶりぐらいのソウル。
いつもなら渡航先のことを結構調べて、行きたい場所を効率的に回るため、ある程度の地図を頭に入れてから出かけます。しかし今回は、そうした予備知識もほとんどありません。1ヶ月以上にわたる中国本土の旅の終盤でもあったので、まずは身体を休め、溜まっていた仕事を片付けることを第一に考えました。でも、久しぶりの韓国も楽しみたい。
深夜4時に市内に到着するという変なスケジュールだったので、ホテルに無事チェックインできるか少し心配でしたが、予約したホテルはタッチパネル式の自動チェックインだったので、難なく入室できました。眠りにつく頃には朝日が昇っていたね。まあ、いつものことではあるけど。
ちなみに私は、この連休中に見つけたソウル最安値の宿として、地下鉄1号線の外大前駅の近くに泊まりました。韓国外国語大学のお膝元ですね。ソウル最安値の宿だったのでドキドキしましたが、下水の臭い以外は何の不満もなかった。いや、下水臭いのは結構な問題かもしれませんが。
寝て起きたら、まずはPCを持って近くのカフェへ。ところが、そのカフェではなぜか「国際クレジットカードが使えない」と言われてしまいました。チャッピーに聞いたところ、「韓国ではそういうことが結構あるよ」と言われたので、仕方なくATMで現金を下ろすことに。
なお、飛行機の欠航などの影響で結局5日間韓国に滞在するのですが、国際クレジットカードが使えないなんて話になったのは、最初のこのカフェだけでした。現金まったくいらなかったぜ……。チャッピーも適当なことを言いやがって。
しょうがないから、とりあえず飯でも食うぜ。食うならうまいものがいいな、というわけでNaver Mapで評判の良さそうな店を探します。韓国に行くみなさん、旅をよくする最初のコツは、Google MapsではなくNaver Mapを見ることです。
そして見つけたのが、회기왕족발보쌈(フェギ王豚ポッサム)。これが大正解!
正直、私は韓国料理がそこまで好きではありません。食べられないとかそういう意味ではなく、自分の中の打率としては、中華>ベトナム>タイ>地中海>和>韓国=トルコ=メキシコぐらい。日本でも月に1度ぐらいは食べるので、決して嫌いというわけではないのですが、採点は厳しいのです。
そんな私が、韓国料理の中でも最も好きな料理、ポッサムのお店として、これまでで一番美味しいと感じたかもしれない店でした。

死ぬほどおいしかったポッサム。
中央の大皿に乗っているのが、ポッサムと付け合わせの各種キムチ。ポッサムがうまいのはもちろんですが、さまざまなキムチがミルフィーユ状に包まれていて、これが淡白な味のポッサムに対して絶妙なパートナーぶりを発揮していたんだなあ。ああ、また食べたい。
外大前駅って、東京で言えば赤羽みたいな、観光客にはちょっと微妙な場所なんですが、これを食べるためだけにまたここに泊まってもいいぐらい。
でまあ、お金も下ろして、中国では捗らなかった原稿も一つやっつけて、ご飯を食べて腹もいっぱいになりました。トイレの鏡で顔を見たら、1ヶ月の旅で髪の毛は伸び放題、髭も鼻毛もぼーぼーのありさま。中国本土ではなんだかそれでも平気だったんだけど、美容大国韓国で鼻毛はいささかダメでしょ、と思ったので、美容室に行くことにしました。
JUNO HAIR(준오헤어 사이버외대점)。

散髪中に自撮り。
JUNO HAIRはここだけでなく、ミョンドンでもアックジョンでも見かけたので、どうやらチェーン店のようです。雰囲気もよく、日本円で5,000円ぐらいでカットしてくれて、とてもいい場所でした。何度も細かく洗髪とカットを繰り返すのが韓国流って感じでしたね。
髭も剃ってほしいとお願いしたところ、ここは美容室だからダメだと言われました。そういうのは厳しいのね。そこで再びNaver Mapとにらめっこしたところ、近くにDAISOを発見。髭剃りと鼻毛カッターを買って、すっかり綺麗になった私。
その後は24時間営業のカフェ、A TWOSOME PLACEで深夜までお仕事をして、この日は午前3時ごろに帰宅しました。

大学そばの深夜カフェということで、ノマド民がたくさんいました。居心地よかったよ。
TWOSOME PLACEは韓国ならどこにでもあるカフェなんですが、これ、日本にもあるといいよね〜。
日本のドトールやコメダ珈琲、エクセルシオールより利用者が若く、スタバほどのラグジュアリー感はないけれど、その分気軽に使えて、店舗によっては24時間営業。あ、台湾のLouisa Coffeeに似てるかも。24時間営業のLouisa Coffeeです。伝わってるかしら。
日本で言えばファミレスが近い存在だと思うんですが、ファミレスってドリンクバーじゃないですか。ちゃんとエスプレッソマシンで抽出したコーヒーが、深夜でも飲める。しかもPCを広げて仕事ができる。
それが私なりのソウルの贅沢です。
さて、今回の滞在先だった外大前駅。チャッピーいわく東京の赤羽のような立地なのですが、私個人的にはここは江古田ぐらいの規模感ですね。学生街だし。これがなかなか居心地のいい街でした。
宿代は安く、韓国コスメ好きにはおなじみのOLIVE YOUNG、プチプラ商品の宝庫である韓国DAISO、ベーグルの美味しい24時間営業のTWOSOME PLACE。そのほかにもドラッグストアやコンビニ、韓国料理屋が軒を連ねています。
それでいて、新大久保やミョンドンのように観光客向けの高価格・低クオリティなお店は少なく、学生街らしい気取らない雰囲気があります。大学のキャンパスも一般に開放されていて、学生たちのサッカーの試合を眺めながら、のんびり過ごすこともできました。
ソウルに来たからといって、毎日観光地に出かける必要はありません。地元の人が暮らす街に泊まり、美味しいものを食べ、カフェで仕事をして、たまには美容室に行く。そんな過ごし方をするなら、むしろこういう街の方が楽しいのかもしれません。
何より、宿泊費が安いのがありがたい。
予定外にやってきたソウルで、予定外に気に入ってしまった街。みなさんもソウル滞在の際は、ぜひご検討ください。

ソウル外大は一般に開放されているみたい。明らかに大学生じゃない人ものんびり散歩したりランニングしたりしてた。
なんか初日からかなり文字数使ってしまい、すでに情報も多いので今日はここまで。あ、でも、この外大前のとっておきのカフェを、読者のみなさまだけに教えちゃいます。
今週のオアシス COMPLETE COFFEE (韓国外国語大学前/ソウル/韓国)

日本から行ったらそんな気分にならないかもしれませんが、中国本土1ヶ月の旅を終えてやってきた韓国なので、このクオリティがしっかりしたカフェがごろごろあるソウルが幸せで仕方ありませんでした。今のところ赤羽みたいな地元駅しか堪能していない私ですが、2日間ここに滞在した私から、この駅前の街一番のカフェを紹介しましょう。名前はComplete Coffee。なんたって「Good Coffee HERE」ですからね。英語でもてなされているのがもう嬉しい。
いつもブラック派だった私ですが、一度胃が弱くなってからというもの、最近はオレ系を朝には飲むようにしてまして、私の朝は、なるべくコーヒー感の強いコーヒーにソイミルクかオーツミルクを足すカフェです。
コーヒー感を足すのは簡単で、まずはカフェラテでもフラットホワイトでもそのあたりを頼んで、そこから『Could you change soy milk? or Oat milk?』と言って(いいカフェなら大抵やってくれる。とは言えソイもオーツも味を調整するため添加物が入ってるケースがあるため、調整豆乳だと思った時は普通のミルクと交互に頼んだりします)、そのあと『Could you make Double or Triple shot?』などと言えばコーヒーが濃くなります。あ、おしゃれカフェで英語でオーダーする時は「May I have・・・」でワンテンポかツーテンポ置いて、言いながら閃いた顔をして欲しい商品をオーダーすればOKです。
COMPLETE COFFEEで飲んだコーヒーは本当に美味しかった。そんなわけでつい浮かれて小麦と油の塊ことスコーンを頼んじゃいました。だって店頭で美味しそうに飾ってあるんだもん。

このカゴに入ったスコーンうまそうじゃない? 輝いてるでしょ。笑
そんなわけでソウルはたった一駅の駅前だけでも楽しめる素敵な街です。
COMPLETE COFFEE

コーヒー、運んでる間にこぼしちゃった。
さあ、今日の音楽のコーナーはK-POPの話題、と思いきや、まさかのマレーシアからの音楽の話題です!
今週楽園で聴きたい音楽 Untuk Dia/SleeQ feat. Najwa Latif(クアラルンプール/マレーシア)
無意識の力を侮ってはなりません。とりわけ、世間の流行とは無関係に、自分だけがなぜか惹かれてしまうもの。なぜ自分はこれが好きなのか。なぜこれが気になるのか。なぜこれに触れると心が軽くなるのか。そうした感覚には、きっと何か大切な理由があるはずです。そして、それが最も繊細に現れるのが音楽だと思います。あなただけのお気に入りの曲は、ヒットチャートの順位や周囲の流行より、ずっと価値があるものです。
私にとっては、この曲もその一つです。
SleeQは、マレー系シンガポール人の二人によるマレー語のヒップホップデュオで、のちにマレー語話者の多いマレーシアへ活動拠点を移しました。フィーチャリングした女性歌手はNajwa Latif(ナジュワ・ラティフ)。マレーシア・ジョホール州のバトゥー・パハト出身です。位置関係は各自確認してもらうとして、JB(ジョホールバル)とKL(クアラルンプール)の間にある、マレー半島西海岸の町ですね。かわいらしい笑顔が魅力的で、マレーシアではヒジャブをまとったアイドル的存在と言っていいでしょう。マレー語が本来持つかわいらしい響きも堪能できるので、よかったら聴いてみてね。
で、どんな曲なのか。さすがに私はマレー語がわからないので、こうして原稿を書くまで知らなかったのですが、実はこれ、身分違いの恋を描いたラブコメのような歌なんです。
冒頭の「Kuatkan radio」(ラジオのヴォリュームを上げてくれ!)という掛け声から始まり、最初のヴァースでは、「彼女はおしゃれで、いつも気前よくお金を使う。きっと裕福な家の娘なのだろう。シンガポールに来ても親戚の家には泊まらず、高級ホテルのシャングリ・ラに泊まりたがる」と続きます。シャングリ・ラはなかなか高いよ。庶民の彼が良家のお嬢さんっぽい子に恋しちゃう、例のあれですね。
しかも二人が出会ったのはFacebook。彼女からKLで会おうと誘われた彼は、「俺がかわいいからかな?」なんて思っている。なかなか調子のいい男です。しかし彼女にはすでに恋人がいて、しかもそいつはメルセデス・ベンツに乗り、彼女の欲しいものを何でも買ってあげる金持ちなのです。
それでも彼は「彼女にすべてを与えるべきなのは僕だ。僕なら彼女のために何だってできる」と歌います。曲中で繰り返される「Untuk Dia」(日本人の耳にはオートディアと聴こえるかも)とは、「彼女のために」という意味です。健気な男。
では、女子は彼のことをどう思っているんでしょうか?
「あなたはお金持ちじゃないけれど、魅力がある。私が見ているのは外見だけじゃない。私がお金をたくさん使う女に見えるかもしれないけど、本当は普通の女の子なの」
なんと、彼女も彼に恋をしていたみたいです。シャングリ・ラホテルに普通の恋が転がっているのかわかりませんが、彼女も人並みの恋がしたいわけ。
「あなたの笑顔に心を奪われた。でも恥ずかしくて、好きだと言えなかった」
さらに彼女は、金持ちの恋人が何でも買ってくれることを認めながら、「でも、そんなものでは幸せになれない。お金がすべてじゃないの」と打ち明けます。
なんだ、両思いじゃないですか。しかし、彼女にはすでにメルセデス男がいます。この恋はうまくいくの? がんばれ、庶民の彼。
良かったら、5分いただいてMVを見てください。マレー人がクアラルンプールをKLと略すことも、Facebookが恋愛の舞台になることもよくわかります。そして何より、マレー語の響きってこんなにかわいらしいのか、と思ってもらえるかもしれません。
ちなみにSleeQはすでに解散してしまったグループ。寂しい〜! 再結成してよ、日本の一ファンより。
今週楽園で読みたい本 台湾夜市大全、三文字 昌也 (台北/台湾)
さて、久々に本紹介のコーナー。この本は少し前に読んだのですが、最近あまりにも中華圏の話題が多かったので、他のコーナーが中華圏以外の話題になる日を選んでいたら、紹介するのが遅くなってしまいました。
この本は、台湾独特の文化である夜市について、その歴史的な成り立ちから、行政との関係、そして現在に至るまでを紹介する一冊です。
そもそも夜になったら屋台が公道を占拠するなんて、国によっては大問題になりそうな話です。実際、同じ中華圏でも香港にはかつて多くの露店が存在しましたが、公衆衛生や交通渋滞などの問題から、その多くが姿を消しました。香港の露店文化は飲食中心の台湾型夜市とは少し異なります。ではなぜ台湾でのみ、こうした夜市が行政と折り合いをつけながら生き残ってきたのでしょうか。
そんな問いに迫る、学術的でありながら実にスリリングな本です。こういう研究は大好き。
夜市を通して台湾社会を知るという内容ですが、これは普段、私がポップミュージックや映画を通して各国の文化を紹介していることと、根本的には同じだと思います。一つの文化を深掘りすることで、その社会のあり方まで見えてくるわけです。
私は、夜市は真に公共的なものだと思います。それは日本の、客がほとんどいない文化施設の何億倍も。
台湾では、若者が一人暮らしをする小さな部屋に、キッチン設備がないことも珍しくありません。だから彼らは夜市で食事を買い、家に持ち帰って食べる。大学の近くに夜市が多いのも、学生たちの日常生活と密接に結びついているからです。
つまり、夜市があるおかげで、一人暮らしの狭い部屋にキッチンを設けなくても生活できる。お金のない若者でも、キッチン設備にかかる家賃や、自分で料理を作る時間と手間を節約できるわけです。
これは例えば、各家庭にお風呂がなかった時代の銭湯と同じです。自分の家にすべての設備を備えなくても、街に出れば必要なものが手に入る。都市全体で生活を支える仕組みですね。
これを本当に庶民の味方である公共と言わずして、何と言うのでしょうか。
もちろん、衛生基準や交通渋滞、近隣住民との摩擦など、さまざまな問題があります。それでも台湾の夜市は、行政との折り合いをつけながら生き残ってきました。
なぜなら、そこに暮らす人々に必要とされているからです。
生き残るものには、生き残るだけの理由がある。夜市はその好例だと思いました。
台湾夜市大全/三文字 昌也
おわりに
助手「船長、ボク、飲食店を始めたい!」
船長「飲食店は大変だよー」
助手「そうやって否定から入るのやめてよ」
船長「ごめん、つい。でも大変だよー」
助手「じゃあフードトラックにしようかな。台湾の夜市に出店するのもいいね!」
船長「確かに、店を構えるよりは気軽に始められそうだな」
助手「えー、何売る? 何売るー?(ワクワク)」
船長「助手君はそういうのが好きなんだな。文化祭とか盛り上がったタイプだろうね」
助手「もちろん! うーん、船長とボクの写真がプリントされたオリジナルTシャツ屋かな」
船長「飲食どこ行ったんだよ」
助手「あ、飲食も売りながらTシャツも売るの!」
船長「(そんなの売れるかな……)で、食べ物は何がいいの?」
助手「やっぱり原価率が低くて、みんなに人気のあるもの。フライドチキンかな!」
船長「そこだけ意外と現実的だな」
助手「ヤンニョムチキンとフライドチキン!」
船長「韓国の若者みたいな発想だな」
助手「あとはねえ、寿司!」
船長「寿司は屋台じゃ難しいだろ。生魚は怖いし」
助手「確かに生ものは大変だから、牛肉の甘辛炒めとか、ぜんまいやニンジンを塩漬けしたものとか、卵や野菜を、ごま油で味付けした海苔で巻くの!」
船長「うん、それはキンパだな。それも韓国料理だよ」
助手「あれー? 気がついたら韓国料理屋になっちゃった。ま、いっか。韓国は若者の間でも流行ってるし!」
船長「なんだそのおじさんみたいな結論。でもまあ、ヤンニョムチキンとキンパならいけそうだな」
助手「ねえ、でも一人でお店出すのは恥ずかしい。船長も手伝ってね(ぴえん)」
船長「なにが(ぴえん)だよ」
助手「(ぴえん)」
船長「しょうがないなあ。それが君の夢なら、手伝うよ。俺たち同じ船の仲間だろ」
助手「やったー! 船長大好きー!!」
船長「かわいいやつだな」
助手「ふふふ〜。船長とボクのTシャツ作らなきゃ」
船長「そうだな(来週になったら忘れてそう……)」
(つづく)
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