楽園の地図133号 北京・真夜中の天安門広場

真夜中の天安門市場/Soloist Coffee/Carsick Cars/ANORA
船長と助手 2026.08.07
誰でも
Tiananmen Square, Beijing, China

Tiananmen Square, Beijing, China

もくじ

はじめに AIとスマイルカーブ
今週の楽園 北京・真夜中の天安門広場
今週のオアシス Soloist Coffee(胡同/北京/中国)
今週楽園で聴きたいBGM  崔健/飞了(北京/中国)
今週楽園に行けなかった人のために ANORA アノーラ(ニューヨーク/アメリカ)
おわりに

はじめに

スマイルカーブの話

先週、会社をたたむ話をしたところ、ごく一部の読者から反応がありました。今後私がどうするかは先週チラッと話しましたけど、今後の編集・ライター業界がどう変化するかについて、気になってる方も多いと思いますので、私の考えを述べさせていただきます。たぶんこれは、デザイナーとか、プログラマーとか、何らかの成果物を作ることで生計を立てていらっしゃる方にとっては重要な話。

私はいま、製造業などでよく使われる、スマイルカーブという構造を結構頭のなかに置いて行動しています。

スマイルカーブのモデル図(参考リンク)

これは今に提唱されているものではなく、古くから存在する理論なので新しさはないと思います。でも、新しい構造変化が起きようとしているとき、古い理論が使えるというのはよくある話。今はこの理論が使えると思って頭にとどめています。

スマイルカーブの本質は何かというと、すごくざっくり言えば、「製造」コストはグローバル化によって圧縮され利益率が下がる一方、最も川上にいる「企画」・「マーケティング」・「ブランド」は利益率が上がり、「アフターサービス」も利益が上がるというものです。まず間違いなく、AIはこのカーブをより急にするでしょう。製造工程は、たとえばWebコンテンツのようなものの場合、一瞬でノーコストで生み出す可能性が高いですからね。

さらに、この図では川上にいる「マーケティング」のような、頭脳労働と思われていた箇所も危ういかもしれません。これも頭脳労働だった「法務処理」なんかもAIでかなり削減可能ですからね。「アフターサービス」は、例えば「クレーム対応」といった処理はAIにできることだし、やるとすればインフルエンサーのような、定期的にお客と接点を作るような業務が残ると思います。川上では、「企画」が生き残るでしょう。もちろん企画だってAIが考えてくれますが、今のところこれは人間に残された最後の領域のようです。

これをコンテンツ産業に当てはめると、「企画」と「読者(ユーザー)とのコミュニケーション」に付加価値を置くこと、になると思います。でも、「企画」ってあんまり組織はいらないんですよね。一人でできる。コミュニケーションは、案外人が必要で、実はここが、会社の生き残りの鍵だと思います。私はどちらかと言えば企画とか、川上に興味があるので、これからはそれしかないと思います。編集者を志す人は企画者としての能力を磨くしかありません。

「企画だってAIで代用可能なんじゃないのか!?」

はいそうですね。そういうとき私がイメージするのはドラえもんです。ドラえもんとのび太くんの関係を考えてみてください。AIはドラえもんで、不思議な道具で様々な願いを叶えてくれます。しかし、のび太くんはAIにはできません。これからは、のび太くんの時代に入ったと思います。

今週の楽園 北京・真夜中の天安門広場

自転車だらけの街、北京

自転車だらけの街、北京

しばらく続いた中国大陸シリーズもいったん終わり。この旅の最終目的地である北京にやってきました。

東京と大阪が大きく違う価値観を持つ通り、北京と上海はもちろん大きく異なります。私は長らく中国系の文化について記事に書いてきているのでこういうことを思うんですが、中国は、2種類に分かれると思います。それは、陸の中国と、海の中国です。海の中国は、古くから貿易をして、つまり商いをして、生計を立ててきました。台湾、シンガポール、それにアメリカやカナダや横浜のチャイナタウン。そういうところに住む人は海の中国人です。彼らはしばしば、自分たちの土地を持っていません。海が主戦場だからです。海というのはもちろん比喩で、それはよりわかりやすく書けばネットワークということです。各国のチャイナタウンの人々は自分の国家は持ち合わせていませんが、ネットワークがあります。

さて、香港も海の中国だったのですが、最近は陸の中国が押し寄せてきて、ここのところ軽い内戦状態です。今は少し落ち着いていますが、また何かあるかもしれません。そして、上海というのは、法制度的には陸の中国ですが、実はマインドとしては海の中国を持ち合わせています。彼らは、外国人に慣れている。

北京は陸の中国の首都である。彼らは、土地を持つことが仕事であり、この土地が私たちの場所と思っている。だから、外国人の私は基本的には部外者であり、だからなんか、基本的には上海よりも冷たい。誰も中国語以外は話してくれないし、警察はなぜか私の行く手を阻んだりする。そんな街になぜいくのかって話なんだけど、これが中国のニクイところで、ご飯はめっぽううまい。

しゅうまい

しゅうまい

写真は、北京の前门大街(前門大街)の焼売屋さん、都一处(都一処)のしゅうまい。うまいんですよこれがー。日本のしゅうまいとは雲泥の差です。

特に北京の街は大昔から首都があった都で、漢民族はもちろん、満州族、モンゴル族などが支配したこともあるので、中国中の様々な調理法が入っていて、それが宮廷によって洗練され、こういう見た目も美しいしゅうまいが1000円で食べられるというわけです。

みなさまはどうかわからないですが、美味しいご飯がある土地なら多少扱いが悪くても行きたくなりませんか?

ただ、大きな北京、どこに行っていいかわかりませんよね。というわけでなんとなくの北京の楽しみ方を知っていただきましょう。みなさまには3日ぐらい自由時間があるとして、何を見るべきかをまとめました。

<絶対に見た方がいいもの/食べた方がいいもの/経験したほうがいいもの>

(観光地)
1.天安門広場
2.八達嶺長城(万里の長城)
3.銀錠橋〜后海

(商店街/市場/通り)
4. 前门大街(前門大街)〜大栅栏〜胡同
5. 五道営胡同

(食事)
6.北京ダック

(体験)
7.自転車、シェアサイクル、ツーリング

いろいろ勧めたいものはありますが、削ぎ落とすと7つだけになりました。北京という街は大きいし、見どころも多いので、逆に何をするべきでないかをお伝えした方が参考になると思いまして。削ぎ落としたところ私的にはこの7つですね。たぶんガイドブックなんかを見ると以下のような場所が観光すべき場所として記されていると思いますが、絶対に見た方がいいとは思いません。

故宮博物院(紫禁城)→北京の中核。ガイドでは常にトップで紹介されるような場所だが、中国の歴史にそれほど興味がなければあえて行く価値はないような気もする。いつも人で溢れていて風情はない。団体の観光客で溢れている。行くとありがたい感じはする。

オリンピックスタジアム(鳥の巣)→見るとほぉーとは思う。あと、夜はライトアップが綺麗。だが、絶対に見なきゃいけないというものでもないと思う。

王府井歩行街→北京ナンバーワンの繁華街。歩行者天国になっている目抜通り。昔は雑多な雰囲気が好きだったが、現在は綺麗に舗装されて、中国っぽい雑多さが消えてしまって寂しい。悪い意味でヨーロッパの街みたいになった気がする。ここなら、おすすめの前门大街、あるいは五道営胡同がいい気がする。

798芸術区→もともと大きな工場エリアを改装し、アートギャラリーへと改装した場所。工場の跡地をフォトスポットにしてたり、工場の殺風景な感じを活かした展示がそれなりに楽しかったり、行って損があるエリアではないと思う。が、有名になりすぎてただの観光地のようになってしまい、魅力は半減中。横浜赤レンガみたいな場所を想像するといいかも。楽しいけど、3日間のスケジュールに組み込むかはあなた次第。

三里屯→駐在の外国人や成功した人が集うお金持ちエリア。その中心に素敵なお買い物地区があり、歩くだけでそこそこ楽しい。おしゃれカフェが揃ってるのでノマドにちょうどいい。表参道みたいなエリア。楽しいか楽しくないかはあなた次第。あくまで、絶対に北京に行ったら行く場所じゃない、って感じです。

というわけで、削ぎ落とした7つの体験すべきことを簡単に紹介していきます。

1.天安門広場

オープニングの写真で紹介した通り。北京に来たらとりあえず行っておいたほうがいい場所。

2.八達嶺長城(万里の長城)

なんだかんだ、一番すごい建造物だと思う。行ってみて思ったのは、山の中を、高低差関係なく問答無用で塀を作ったところ。尾根沿いに作っているという噂はあったが、私が行った八達嶺長城に関しては、標高が低い場所にもあり、塀を作れば攻めて来ないとか、そう考える大胆さも含めて中国っぽい場所。口頭で魅力を伝えきれないから、やっぱりみてもらった方がいい場所。

3.銀錠橋〜后海

最もお気に入りの場所かもしれない。体感では井の頭公園の池ぐらいのこぢんまりとした池「后海」の周囲に、レストランや、ライブハウス、バーが集まるエリア。夜遅くまで賑わっていて楽しいエリア。「東岸」というジャズ系のライブハウスや、若者向けのヒップホップバー、民謡バーなどがある。銀錠橋という小さな橋があり、そこがこの街の中心。池の周りには遊具があるような公園もあり、家族連れも多いので北京の庶民の暮らしも味わえる。これも行かなきゃ良さがわからないエリアかも。

4.前门大街(前門大街)

天安門広場から少し南に降りた場所にある、庶民的な商店街。改装されてとても綺麗になったが、王府井が欧州化したのに対し、前門は中国感を残したままでいい感じ。最初に紹介したシュウマイ屋さんもあるけど、とにかく美味しいごはん屋さんが多い。すごくおしゃれな東洋風スターバックスもある。裏にスターバックスリザーブ(中目黒にあるやつ)もある。

東洋風スターバックス

東洋風スターバックス

王府井よりこちらのほうがより中国感が味わえて好き。ここから「大柵欄」という裏道にそれたところにある商店街(イメージ的には原宿の竹下通りと、上野のアメ横を足したような場所)もあり、徒歩で行ける街に連続性もある。奥の方にいくととても細い住宅群「胡同」もあり、これもふらふら歩くのがおすすめ。

胡同はこんな場所。昔の北京の雰囲気が残るエリア。

胡同はこんな場所。昔の北京の雰囲気が残るエリア。

5.五道営胡同

胡同というのは大昔、急速に都市化する北京で住宅開発のために作られた住宅群の細い路地を指すが、北京では生活臭が漂う独特な意味を持つ。タイ語の「ソイ」に近いかもしれない。どちらかと言えば貧乏くさいものだったが、一方、21世紀に入るとそんな古い北京を見直していこうと観光地化され、なかでも有名な胡同が五道営胡同。ここはアンティークショップ、アパレル、カフェ、洋風レストランが多く、一方でキッチュさもあって、楽しい場所。東京で言えば下北沢のような場所かも。

五道営胡同

五道営胡同

6.北京ダック

なんだかんだ、北京に来たら北京ダックは食べてほしい。有名店を3つぐらい回ったけど、どこで食べても美味しかった。楽園の地図的にいちばんのおすすめは、利群烤鴨店。昔からある有名店だが、大げさに言えば皮が飴細工みたいに分厚く、食べると旨みが溢れてくる。一方で肉の部分(パリパリしてない箇所)もかなり残してくれていて、これがありがたかった。私なんかは一人ということもあり、北京ダックと、ブロッコリー炒めぐらいしか頼まなかったが、ライスとか別のオーダーなしで、ストイックに北京ダックを食べるに限る。なぜかというと脂っこいので一人で一皿食べるとかなりおなかがいっぱいになるのだ。美味しくたべるポイントは、茶色いソースをあまりつけすぎないこと、手巻きの皮に巻くときにダックをケチらないこと。

7.自転車〜ツーリング

ということで3日間でミッションはたったの7つ。え?時間が空くのでは? 作戦通り。

北京は、というよりも中国大陸はシェアサイクル文化が発達していて、街中ならすぐにアプリを使って自転車を借りられる。ということで、残りの時間はひたすら自転車を漕いで、気になる場所があったら入るのを繰り返すというのをおすすめする。日本のシェアサイクルの場合、特定のポートに置かないと返却できないが、なんと中国本土のシェアサイクルは乗り捨てOK。好きなところで乗り捨ててかまわない。自転車ユーザーがめちゃくちゃ多く、車道も広いので

最初はアプリの操作に手間取るかもしれないが、それもまた旅の風情。ホテルのフロントの人に聞いたりしたらきっと親切に借り方を教えてくれるだとろう。

初乗り20円ぐらいでチャリに乗れる

初乗り20円ぐらいでチャリに乗れる

自転車のいいところは終電を気にせずに乗れるし、北京の街は広いとは言え、それでも自転車で30分も乗ればかなりの距離を移動できる。都心では地下鉄+徒歩や、場合によってはタクシーよりも早いことが多い。

真夜中の天安門広場

ところで夜中にシェアサイクルに乗ってたら、ちょっと得がたい経験をしたんですよ。聞きます? シェアサイクルでホテルまでの道を入力して戻っていたら、ものすごく迂回路を指定されるんですよ。でも北京って、京都とか大阪と一緒で、街が格子状だから、迂回の必要はないはずなんですよね。たまにはガイドを無視しちゃえってことで自分でオリジナルのルートを進みました。

そしたらなんか、中国国旗を配ってるおじさんに出会って、お前らこれを持てと。でも僕は外国人だし、国旗なんかもらってもいらなくなったからといって捨てるのもしのびないし、国旗はもらわなかったんです。そのままさらに進んでいくと警官がいて、パスポートを見せろといってくる。さすが首都の北京。なんか警備が厳重だなと思ったら、今度は飛行機の搭乗口にある、保安検査場のような装置が置いてあって、荷物をチェックしろと言ってくる。この検査、地下鉄の入り口なんかにもあって本当にうざいんですが、かと言ってここで、やっぱりここ通るのやめまーすって折り返したらなんかめちゃくちゃ怪しいじゃないですか。だからそのまま荷物チェックに従って、そして突き進んでいったんです。そしたら・・・

え、あの建物ってもしや??

え、あの建物ってもしや??

わー、やっぱりそうだ。

わー、やっぱりそうだ。

ここまで来て、ようやく厳重な警備の意味と、地図のナビゲーションが迂回路を示した理由がよくわかりました。でも、夜中の天安門広場はかなりきれいなので、警備は厳重ですが行ってみる価値はある場所です。いやー、面白い経験したわ。

今週のオアシス Soloist Coffee(胡同/北京/中国)

今週は楽園のコーナーがずいぶん長くなったので(毎回そうか)、残りのコーナーはさくさく書きます。まずオアシス。北京のおすすめのカフェと言えば、「Soloist Coffee」。ノマドができる三里屯の「Maan Coffee」とも悩みましたが、風情を重視してこちらにしました。「Soloist Coffee」は、先ほどの商店街「大柵欄」をさらに奥に入った胡同のエリアにあるカフェで、場所はこの辺(Google Map)です。このあたりに結構古くからあるコーヒーロースター。やはり中国はお茶文化圏ということもあり、イカしたコーヒーロースターの数は街の規模に比べると圧倒的に少ないのですが、「Soloist Coffee」は数少ない、美味しいコーヒーが飲めるカフェです。昔の北京の市街図やら、アンティークグッズが置いてる涼しい1階もおすすめですが、このカフェに来たらぜひ2階に行ってみてください。吹き抜けがあって、とてもいい雰囲気なんですよ。風情があります。なんか、狭い通りの2階が見晴らし良い感じが、。京都に来たような感覚になりました。コーヒーもうまいし、ロケーションも最高。散歩に歩き疲れたり、自転車に疲れたりしたら行ってみてください。

2階が、通りが見下ろせる吹き抜けになっている。

2階が、通りが見下ろせる吹き抜けになっている。

今週楽園で聴きたいBGM  中南海/Carsick Cars(北京/中国)

ということで音楽のコーナーですが、せっかくなので北京のロックシーンを紹介しましょう。最新インディーズを紹介したいところですが、今週の気分はあえて00年代にタイムスリップして、Carsick Carsの「中南海」という曲。この曲、かっこいいんですよ。いいでしょ? 荒削りなガレージロック感と、間奏の不気味なエレクトリックな感じもいいです。

あえて、スタジオでレコーディングされた版と、ライブ版を載せましたが、どっちも好きです。

さて、中南海(Zhong Nan Hai)とは何かと言えば、いくつかの意味があります。まず、最も直接的な意味は、北京の紫禁城の西にある湖の名前です。北京の西の都心には湖が3つあって、北から北海、中海、南海と呼ばれていますが、中海と南海は実質繋がっていて、だから中南海と呼ばれています。さて、この中南海エリアとは、中国共産党の委員会があって、つまり政治の中枢なんですね。日本でも永田町と言えば国会を意味するし、霞ヶ関と言えば行政を意味する。そんな感じで、中南海と呼んだとき、中国人にとってそれは政治の中枢を指します。さて、さらにもう一つ意味があります。それは中南海というタバコの銘柄です。

さて、Carsick Carsは、「中南海、中南海、中南海、中南海が俺には必要だ! 中南海、中南海、中南海、中南海ばかり吸う!生活には中南海が必要だ!」と何度も絶叫しています。素直に捉えればこれはタバコを意味するのが自然です。間奏に流れるあの不思議な爽快感もたぶんタバコをイメージしている。だけど、中国の音楽表現って、常に検閲をパスしなきゃいけないというプレッシャーがあるから、本当に言いたいことを埋没させたりすることがよくあります。中南海をもし、政治、あるいはもっと直接的に「共産党」を意味すると仮定したら? それでもなお、「共産党が必要だ」と絶叫している愛国ソングにでも聴こえるでしょう。でも、なんか皮肉にも聴こえませんか? 中国人は共産党の顔色をうかがわないと生きられないという皮肉を言ってるのかもしれない。

でも、彼らに本当のところどうなの? って聞いたら、そりゃタバコの歌に決まってるだろうって答える。この辺りの、本当のところ誰にもわからない感じが中国ロックの面白さです。

北京では、この曲をヘッドホンで爆音で流しながら自転車に乗ってました。いやー、楽しかったな。

今週楽園に行けなかった人のために ANORA アノーラ(ニューヨーク/アメリカ)

いやー、今日は綺麗に北京を舞台にした映画で締めようかなとも思ったんですが、さすがにそろそろ中国の話題もいいだろうということで(最近中国の本を作っている関係で、中国率が高くてすみません。あー、タイやインドやアメリカやイタリアのことを書きたい。。)、今回はアメリカ・ニューヨークに在住しているロシア系移民の映画ということで、ANORA(アノーラ)を紹介します。これが相当いい映画なのよ。

私はどうもアメリカを舞台にした、移民を扱った映画が好きなようです。理由はよくわかりませんが、「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(中華系)」も好きだし「パスト ライブス/再会(韓国系)」も好きです。「マダム・イン・ニューヨーク(インド系)」も好きでした。もうめっちゃさかのぼりますし、見てもないけど「星の王子 ニューヨークへ行く(アフリカ系)」も見たら多分好き。そもそもみんな大好きウディアレンだって、あれ、ニューヨーカー(ユダヤ系)の話だし、カッコ書きが彼の作品にはとても意味があります。

どうして移民の映画が好きかというと、私がニューヨークやボストンに滞在した時、自分は移民で人とは違う肌の色をしていると強く感じた経験があるからです。なんか自分の肌の色とか、着ている服とか、低い身長とかどんどんみすぼらしくなってきて、慌ててユニクロで無地のシャツを買いました。

というわけで移民映画(ロシア系)。この映画は、ニューヨークでストリッパーとして働く若い女子を、ロシア系のオリガルヒ(大富豪)の息子が大好きになり、愛人契約を結ぶところからストーリーは始まります。ね、面白そうでしょ?

アッパー(Upper class)なロシア系とローワー(Lower class)なストリッパー、本当なら混じり合わない二人なんですけど、ニューヨークの魔法が彼らを交差させます。そして、恋に落ちる。

だが、その恋はある残酷な結末に向かって突き進みます。要するにこれは、親の七光以外になにも持ってない男と、美貌以外に何も持ってない女という、案外よく似た二人が織りなす痛々しいストーリーなのです。愛し方を知らない男と、愛され方を知らない女。そんな彼女が、非対称的に大きく傷ついて、でもだからこそ成長の希望の一筋の光が最後に見れる話なのです。主演の二人に注目しがちですが、この映画の影の主役であり、何かを持ってる男、イゴールに注目です。

おわりに

助手「あ、北京ダック2人前。あと、船長にビールとブロッコリーを」
船長「今日は俺のおごりだぜ」
助手「嬉しいなあ。でもまあ、船長って、いつもなんだかんだ言って奢ってくれますよね」
船長「まあまあ食べなよ。食べてる君が好きなんだよ」
(食後)
助手「食べた〜」
船長「食べすぎた〜」
助手「そう言えば船長って少し太ってませんか?」
船長「うるさいなあ、君のほうこそ。ホテルに帰って運動でもするか?」
助手「いいですね!ちょっと食べすぎましたから運動しましょう」
(運動後)
船長「いやー、運動したねえ。すこしは痩せたかな」
助手「そんな1日じゃ痩せないでしょう〜。あ、でも船長」
船長「なんだい?」
助手「運動したらおなかすいてきた」
船長「えー、さっき食べたのに」
助手「もうおなかすいたの!」
船長「えー。でもそんなおなかすいたすいたと言われたら、こっちもなんだかおなかすいてきたな」
助手「ご飯食べに行きましょー」
(最初に戻る。何度かループしたら下にすすむ)
助手「ねえ、結局僕たちって、食べて、運動して、また食べて、いったい何してるんでしょうね」
船長「それは君、人生に意味を求めているからそう思うんだよ。すべての人生は、ループだ。客観的に見たら滑稽なものだよ」
助手「まあ確かに、言われてみたらみんな飽きずに飯ばっか食べてますよね」
船長「そう、それが人生。でも、ループしてるようでほんの少し変わっていく。その変化を楽しむのが人生なんだよ」
助手「へえ。確かにループしているようで、違いに一個気づきました」
船長「なんだい?」
助手「二人とも運動しても体重がどんどん増えてます。これを楽しむのが人生なんですね」
船長「・・・」

(つづく)

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