楽園の地図135号 旅の偶然を捕まえた日(台湾・台東)

台東/太麻里文創咖啡館/Section-Sと90年代東京/グッド・フライト、グッド・ナイト
船長と助手 2026.09.04
誰でも
Nanqiang Street, Kunming

Nanqiang Street, Kunming

もくじ

はじめに 旅とAI
今週の楽園 旅の偶然を捕まえた日(台湾・台東)
今週のオアシス 太麻里文創咖啡館(台東/台湾)
今週楽園で聴きたいのBGM Pacific Shore Hotel/Section-S(東京/日本)
今週楽園で読みたい本 グッド・フライト、グッド・ナイト : パイロットが誘う最高の空旅(機上)
おわりに

はじめに

未踏の地に行きたい

いろいろな状況がありつつも、私は再び中国本土の地に踏み入れています。香港に行く用事があって、そのついでに以前の中国旅ではさらえなかった広東省と雲南省に挑戦中です。香港→深圳→広州と広東省を見てきて、そこから飛行機で昆明にやってきました。このあと、昆明→大理→麗江と回る予定です。帰りにあと1都市(今の本命は台湾の対岸の廈門。あるいは以前の旅では雨で十分に回れなかった杭州にもう一度行きたいかも)行こうと思っています。

これで中国本土は、北京、上海、蘇州、杭州、成都、重慶、深圳、広州、昆明、大理、麗江(+廈門?)と訪問都市が増えました。主だったところでは、西安とか南京とかが残っていますが、さすがに中国本土各地を回ったと言える段階に入ってきたと思います!

私の前の奥さんが、そうやって旅をして訪問地が増えていく私を見て、まるでスタンプラリーだと揶揄していました。確かにその通りかもしれません。

私は子供の頃、自分で歩けるようになった頃(4歳ごろ)には、近所中をうろついていました(今の子供は親元を離れて行動することはあまりないようで、当時の子育ては放任だったんですかね)。時に上級生に出会ってボールを投げられたり、いじめられたり、トラックに轢かれかけたりと酷い目に遭いますが、それでも私はいつでも、いつだって、親の制止を振り切って外へ外へと向かっていました。どうも私には、未踏の地に踏み入れたいというDNAが埋め込まれているみたいです。

逆にいえば、親元を離れた16歳から、初めて自分で海外に向かう30歳までの14年間は、例外的に外へ向かっていなかったと言えるかもしれません。でもその期間は、やはり別の意味での未知の世界に興味があったわけです。編集・ライター業界、その他、取材を通してあらゆる業界の内部へと向かったこと。あるいは異性との恋愛というのも、私が夢中になった未知の世界。笑。会社の起業も未知への興味にあたる。結局、いつの時代も未知の世界を目指していたんだと思います。

そう考えると、私の人生はいつだって、未踏の地への興味だけで生きてきたわけです。しっかり地元に根を張って、子供を育てながら地域の活動に参加して、みたいな生活をしてみたかった気もするけど、たぶん自分には合わないので、今は距離をとっています。

果たして私が根を張ることはあるのか。あるとすればどこで、どんな形でなのか。

永遠に続くと思っていた自分の会社をたたむことが決定した今、すべては移ろいゆくと思いながら、人生を車窓から眺めています。でも、この移ろいゆく人生には移ろいゆくなりの、偶然の出会いもあっていいんだよね。

というわけで今日は、「旅の偶然を捕まえた日」と題して、前回から引き続き、台湾一周旅を続けます。ただいま中国大陸渡航中につき、YouTubeのリンク切れやその他の崩れがあったらすみません!

今週の楽園 台湾・台東 旅の偶然を捕まえた日

台湾もこのあたりまでくだると、自然の雰囲気が東南アジアのような見た目になる。

台湾もこのあたりまでくだると、自然の雰囲気が東南アジアのような見た目になる。

というわけで、前号では台湾一周旅ということで、台北から花蓮までやってきた私。そのまま夏の魔物に触れるように台東にやってきました。地図を見ながら、台湾の裏の、奥のほうに台東という街がありますが、そこに自分がやってくることになるなんて、この時は思ってなかったな。

花蓮から電車で台東に向かった私は、駅を降りて突然、滞在中にフェスがあることを知ります。私が知るシンガーやバンドも出ることを知り、偶然に感謝しました。Webで発見したわけじゃなく、駅の広告で知ったんですよ。こういう偶然ってうれしくないですか??

駅の広告。今日は6月20日! 僕も知ってる「iceball」が近所にやってくるらしい!

駅の広告。今日は6月20日! 僕も知ってる「iceball」が近所にやってくるらしい!

そんなわけで浮き足立ちながら台東の街の探索を開始しました。台東の街は人口10万人。日本で例えるとどこでしょうかね。人口のわりには市街地が広く、とはいえ市街地の端から端まで自転車で行くことも可能なぐらいにはこじんまりとしていて、私が知る日本の都市で規模や雰囲気が最も近いのは尾道市です。いや、台東は尾道より都会かな。別府市ぐらいまでいくかも。温泉のない別府市ってところでしょうか。って考えている時間が私は大好きです。

このあとフェスに参戦するのでしっかりご飯は食べとこうと思ったのですが、台東は「榕樹下米苔目」という有名な美味しいご飯屋さんがあるとのことで、やってきました。ここの名物は米苔目(ミータイムー)というなんか、かつおぶしがたっぷり入ったうどんみたいな料理で、鰹節大好き、うどん大好きな日本人はもれなく好きだと思います。

写真左下が「米苔目」。もやしなどが済んだスープに入っててうどんみたいでうまい。あと、旅中はしっかり野菜とタンパク質を取らないとね。というサイドメニューのオーダーです。

写真左下が「米苔目」。もやしなどが済んだスープに入っててうどんみたいでうまい。あと、旅中はしっかり野菜とタンパク質を取らないとね。というサイドメニューのオーダーです。

食感はまさにうどんですが、調べたら米を原料に作られているんですね。日本でもフォー(ベトナム料理)、ビーフン(元は福建料理)は食べられますが、どうやら米をベースにした麺は世界、特に中華圏にわりとありまして、河粉(ホーファン)、米線(ミーシェン)、さらにこの米苔目もそうです。

なんか、小麦が体質に合わない人もいるじゃないですか。私もそうですけど。だから、米を使った麺のバリエーションはフォーやビーフン以外に日本にもっとあってもいいのではと思いました。米苔目も日本の外食に取り入れていきましょう。

というわけで、よくわからないまま、タクシーを呼んでフェス会場に向かったんです。この時点で、帰れるかどうかもよくわからない。台東の田舎のほうなんて、夜はバスも走ってないですし、最悪野宿でもするんでしょうか。まあ、この天気なら死にはしないか。。。

台東の田舎道を突っ走るタクシー。旅慣れてる私でも、こう言うよくわからない場所に夜にいくときはわりと怖いといえば怖いです。

台東の田舎道を突っ走るタクシー。旅慣れてる私でも、こう言うよくわからない場所に夜にいくときはわりと怖いといえば怖いです。

ということでドキドキしながら辿り着いた会場ですが、おお、やってるやってる!

なんだかんだでいい席ゲットできたぜ!

なんだかんだでいい席ゲットできたぜ!

旅の偶然で地元のフェスに参加するなんて、最高ですね。これは「台東最美星空音楽会」(URL)という、光害が少なく星空の美しい台東で、星空を楽しもうというコンセプトのフェスらしく、バンドとバンドの途中には、ステージの照明を消して星空を眺める時間までありました。えー、何それ、そんなロマンチックなフェスあるー!?(大興奮)

私は一人で来ちゃったんですが、こりゃ恋人と来るべきでしたね。

フェスが終わったのは深夜10時半ごろ。こりゃこんなに楽しい旅の偶然があるならもう野宿でもいいかなと思ったのですが(UBERもサービス外)、フェスの帰り道を誘導してくれていた性格が良さそうなスタッフを見つけて、翻訳アプリで「バスはありますか? 帰る手段がない」と打って見せたところ、すぐに地元のドライバーを見つけてくれ、無事帰ってくることができました。いやー、大冒険でしたこの時は。まだまだ旅にはいろんな出会いがありますね!

そんなわけでこの日は大満足して、翌日はバスに乗って、都蘭という集落に行ってみましたが、バスの車窓は良かったんですが、残念ながらこの日は特に何も得るものはなく、まあでも昨日のような偶然もあるしね、などと思いながらまたしても「米苔目」を食べ(気に入ってる)、素敵な出会いのあった台東を離れることにしました。

その後、多良駅という秘境駅(駅自体はすでに廃駅になっていて電車は止まらないけど、その秘境ぶりが人気を呼び、さまざまな手段で目指す人が多い)にも立ち寄りたかったけど断念して、一気に屏東へ。屏東は3時間ぐらい街歩きして、そのまま高雄にやってきました。

高雄は前回、1週間以上滞在したよく知った街なので今回は1泊しただけで移動。でも高雄の駅の上がとんでもない緑地になっていて、見物しました。いやー、こりゃすごいわ。本気の緑化計画。高雄はLRTの整備にも力が入ってるし、海沿いの街の再開発もすごいし、市政がうまいと思うんですよね。物価も安く、中華圏で住みたい街No.1かもしれません。

すさまじい緑化の高雄駅

すさまじい緑化の高雄駅

そんなわけで、この時点で台湾一周旅は東海岸を終え、西海岸にすすんだのでした。

今週のオアシス 太麻里文創咖啡館(台東/台湾)

台東は宿代が安かったので想定より長く宿泊しました。余った時間はカフェで原稿を書いたりしてました。そこでお世話になったのが、この「太麻里文創咖啡館」です。文創(ざっくり言えば文化を創る、という意味)って日本人的にはかなり大仰な名前ですが、台湾では何かと『文創』という言葉を使うので、そこまで大仰な響きではありません。が、とにかくコーヒーが美味しく、作業もしやすく、とてもいい場所です。

太麻里文創咖啡館。台湾の地方都市ではよくある光景なんですが、外観撮ろうとするとバイクが邪魔です。笑。

太麻里文創咖啡館。台湾の地方都市ではよくある光景なんですが、外観撮ろうとするとバイクが邪魔です。笑。

なんか、日本人にとっては、この店構え、日本っぽくて懐かしくないですか? どうやら日本統治時代に、警察官の宿舎だった場所だそうですが、今はこうしてカフェになっています。台湾には、さまざまな場所に日本の痕跡が残っているし、日本人としてはありがたいことに、そういう痕跡を大切に残してくれているようにも感じます。いやー、日本と台湾の関係が長続きしますように。平和がおとずれますように。

台湾って、台東市のような人口10万人の街に行ってもちゃんとおしゃれなカフェがあるし(コメダとかファミレスみたいなチェーン店しかない、という話じゃない)、そこにはちゃんと若者が集っていて、そういうところがいいと思います。コミュニティが生きてる感じがします。

そんなわけでこのカフェでは記事作りもかなり捗った気がします。旅先のノマドスポットは、特に田舎に行くとありがたい。ここはコーヒーも美味しいし、店員さんも優しくて、英語も通じる! (台湾で英語が通じるのは当たり前か。)おすすめのカフェです。

今週楽園で聴きたいのBGM Pacific Shore Hotel/Section-S(東京/日本)

幸運にも、世界中さまざまな場所に行ける時代に生まれました。ニューヨークに行きたくても、パリに行きたくても、スマホでチケットを取って最寄りの空港に行けばたいていの場所から48時間あれば行ける時代になりました。そんな時代の恩恵を、私は全速力で享受していて、でもどうしても行けない場所もあります。それは「◯◯年代の◯◯」という場所です。1990年台初頭のニューヨークのクラブに行きたい。1970年代末のロンドンをパンクファッションで闊歩したい。2010年代のポートランドで街の人々と語らいたい。ああ、一個だけ夢が叶うなら、どこに行こうかな。

そんなとき、私の頭にはなぜか『90年代の東京』が浮かびます。もちろん、それは自分の近くにあったはずなのに永遠に叶いませんが、ある曲を流すと、90年代の東京が見える、という音楽はあります。Section-Sなんて、とても東京‘90のグループなんですよね。

私はあの頃のR&Bがなぜか異様に好きです。これは96年ですが、99年ならSugar Soulの「Garden」とか。今聴くと、あの当時の日本の空気を知ってる人なら感涙モノだから。もっとベタにいくなら、ZOOのChoo Choo Trainも91年の東京の空気が真空パックされてて最高ですよ。

R&Bを現在の日本のポップスに落とし込んでいる人でいえば、藤井風とか星野源とか、女性でいえば今はiriになるのかな? みんな素晴らしいと思いますが、’90、あるいは80年代の終わり頃から00年代の初めに至るまでのR&Bに流れていたあの空気感ってなくなっちゃったんですよね。これは世界的な傾向で、ディアンジェロあたりがR&Bに革命を起こして、以降はネオソウルの時代だと思ってます。この波は当然日本にもやってきて、その先にいるのが、たとえば藤井風や星野源で、素晴らしい音楽を今もドロップしてますけど、90年代あたりのあのあのバタくさい感じというか、甘みが溢れてる感じが好きなんですけどね。復権しないかな。ファッション文脈ではミレニアム系は復権したけど、90年代R&Bは復権しなさそう。当時にはあって、今にはないものが何なのか。今夜は90年代東京の、甘い夢に溺れていたい。そんな夢の導入歌でした。

今週楽園で読みたい本 グッド・フライト、グッド・ナイト : パイロットが誘う最高の空旅(機上)

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意外となかった、パイロットによるエッセイ。ブリティッシュ・エアウェイズに勤めるイギリス人パイロットが、空を飛ぶ仕事について綴った本です。

いやいやこれは久しぶりに面白い本、というか、今まであまり読んだことのないジャンルの文章ではないでしょうか。例えばこの本ではしきりにナブエイド(Navaid)という、航空上の目標になる「航法支援装置」が出てくるんですが、こういう言葉一つ一つが、普段お世話になっているのに知らないことだらけで勉強になりました。

私は人より少し多く飛行機に乗る人生ではありますが、いったいどんな人が操縦しているのか。離陸前に流れるパイロットのアナウンスぐらいしか乗客との接点がないので、パイロットの心のなか、彼らがどんなふうに世界を捉えているのかに興味がありました。

最も面白かったのは、空を飛んでいるとき、どんな感覚なのか、ということです。地上に見える都市がどのようにつながっているのか。例えば車を運転するドライバーなら、ああ、この看板が見えたということは、そろそろ自宅が近いな、とか想像すると思いますが、あれはパイロットにもあって、ある都市を眺めていると、ああ、そろそろ交代の時間か、とか考えるそうです。おもしれー。

イギリス人らしいウィットが効いていて、それでいてジェントル。知人に勧めてもらった本なのですが、その知人は寝る前に読んでいるそうです。この穏やかで優雅な文章が睡眠前にいいというのは、なんとなくわかる気がします。いい夢見れそう。そんなわけで、あなたの空へのフライトタイムか、ベッドルームの夢の中へのフライトタイムか。どちらにも重宝する本です。

おわりに

助手「ねえ船長。なんで人々は1円にもならないのにSNSで何か発信したくなるんですか?」
船長「放っておくのがいいのよ。僕たちが旅をするのが謎なようにね」
助手「確かに。僕もなんでこのクルーが旅ばかりしてるのか謎でした」
船長「え? 助手くん、そっち? なんだかわからず旅をしてたの?」
助手「いやまあ、そんなことはないですけど。ふと、自分がやってることを『なんでなんだろう?』って反芻する時ってないですか?」
船長「ああ、それなら私にもあるよ」
助手「でしょ?」
船長「なんで毎日ご飯ばっかり食べるかなあ、なんで毎日寝るんだろうかなー、とか」
助手「うーん、似てるけど少し違うな。食事や睡眠は生理現象でしょ??」
船長「なんで5円や3円をケチって、コンビニでビニール袋を買わなかったんだろうなあとか」
助手「うーん、なんか、どんどん遠ざかってる気がする」
船長「なんで毎年しなきゃいけないのに、確定申告、毎年期限に遅れちゃうかなーとか」
助手「あるけど」
船長「見たいテレビ番組が始まって30分経ってるけど、今見るのか、我慢してのちにTVerで最初から見るかどうしようかな、とか」
助手「もはやそれはただのあるあるですよ」
船長「なんで恋愛する気もないのに恋をしちゃうかなあ、とか」
助手「ああ、それはなんか僕の最初の問いに近づいてる気がする!」
船長「家具屋さんに行く前に部屋をメジャーで測るべきだったな、とか」
助手「あるけど! さっきからたとえがしょうもない! もういいですよ!」

(旅はつづく)

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