楽園の地図59号 タイの穴場、サメット島は自由の島
はじめに(大事なのは揺り戻しの力強さ)
今週の楽園 サメット島(タイ)
今週のオアシス Cărturești Verona(ブカレスト/ルーマニア)
今週楽園で聴きたい音楽 Like this.../Akin(上海/中国)
今週楽園に行けない人のために スパニッシュ・アパートメント(バルセロナ/スペイン)
おわりに
はじめに
大事なのは揺り戻しの力強さ
近況ですが、東京で書店を始めるにあたって、まずは自分たちの住居物件を探すべく奔走中です。書店(店舗)は賃貸でしょうから、自分たちの住む部屋も賃貸だと、莫大な家賃がかかってしまうので(住居で20万円、店舗で25万円でも毎月45万円の家賃がかかってしまう)、住居は購入することは決定しました。
ですが、山手線の近く、高田馬場〜目黒あたりで物件を探していますが、東京都心は住宅バブルが起こってまして、なかなかいいものがありません。ちょうどいい頃合いのものがあってもすぐに買い付けが行われていて、買い付けの二番手、三番手になることが多いです。
自然と東京都心不動産の地価は今後値上がりするのか、値下がりするのか、というようなニュースがよく目に入るようになりました。テレビやWebの番組ではバブルは続くのか、崩壊するのか、買うべきか、買わないべきか、みたいな二元論になることが多いです。私はあまり目先のことにはこだわらないのでそういう話は娯楽として見るだけで自分の意見を変えることはありません。実際のところ、株でも不動産でも暗号資産でも、来年下がるか、上がるか、みたいなことは話題としては面白いですけど、行動を変えるまでにはなりません。私が気にしているのは、どれぐらい揺り戻す力があるかどうか、しかありません。例えば東京都心の不動産でいえば、近い過去でも、リーマンショック(2008年)、東日本大震災(2011年)、コロナのパンデミック(2020年)と3回ほど下落するタイミングがありました。値上がりか値下がりかを予測することは、このような大きな事件が起きるか起きないかを予測する行為に近く、ほぼ不可能です。それよりも重要なのは、そのような重要なケースが起きてもなお、東京都心の地価は下がっても下がっても再び上がってきた、ということに注目すべきだと思います。結論としては、もちろんローンを組んで買える余裕があり、その家に住み続けたいと思うのであればという条件付きですが、不動産は買いだと思います。
この揺り戻しを考えるのは例えば株にもいえて、米国を代表する500社で構成されるS&P500という株の指標がありますが、今から67年前の1957年に始まって以降、何度も下落のタイミングがありました。ブラックマンデー、リーマンショック、ITバブル崩壊。わずかな期間に半値以下になったこともあります。ですが重要なのは、それでもなお、株価は価格を戻し続けているという事実だと思います。一方で、日本の大手企業で構成される日経平均は、1989年に当時の最高価格を更新した後、実に2024年になるまで、この価格を更新することはありませんでした。米国と日本、どちらに価格を揺り戻す力があるかといえば米国であることは明白です。このことから、もしも米国か日本か、どちらかの株しか買えないとしたら米国の方に賭けるべきである、というのが投資家の間での常識となっています。
この考えはさまざまなことに応用可能だと思います。倒産しない会社を死に物狂いで探すより、いつ会社が倒産しても生き残っていけるスキルを磨いたほうがずっと合理的でありますし、風邪やコロナにならないよう防御することも大事ですが、それ以上に病気にかかってしまってもすぐに治せる丈夫な身体を手に入れることを考えた方がいいかと思います。私の仕事でいえば、一本の記事がバズるか、バズらないかを考えるよりも、いくらでも記事を生み出せるパワーを持ち続けた方がずっとあなたを救う可能性が高いわけですね。
なんか、真面目な話になりすぎたので本編にすすみます。今日は私の大好きな島、サメット島から。
今週の楽園 サメット島(タイ)
サメット島、泊まったホテルについてたプライベートビーチを眺めながら。この島は泊まったホテルにプライベートビーチがついていることが多く、本なんかを読みながらのんびりとビーチでくつろげます。なお、ホテルはどんなに高級でも1泊1万円以下!
サメット島は、バンコクから東南に車で2時間30分ほど行き、そこからフェリーに乗り換えて40分の場所にある小さな島です。自家用車やタクシーのチャーターでなくても、バスでも4時間、200バーツ(800円)ほどで移動可能です。人口はわずか数千人ですが、美しいビーチが広がる、なだらかな島です。私の知り合いのタイ人、あるいは知り合いでなくてもバンコクのタイ人、バンコク在住の日本人にどこかいい場所はないか聞くと、サメット島は最高だとみんな教えてくれます。それだけ地元民に愛されてる島なのですが、プーケット島やサムイ島、パンガン島などと比べると知名度は低いです。おそらく空港がなく、フェリーでのアクセスしかできないことがその理由であると私は思ってますが、バンコクからの移動距離を考えると、実はプーケットやサムイ島よりも所要時間も短く、実はすごく便利な島だと思っています。
タイらしいアクアグリーンの海。
島で一番賑わってるSai Kaew Beach。ビーチをサンダルで歩くとホワイトサンドがキュッと鳴ります(いわゆる鳴き砂)。バナナボートや水上バイクなどアクティビティも充実、そしてタイ価格。
もちろん美しい島は素晴らしいですが、私や一部読者の皆さんから、「こんな田舎の島は海は綺麗だけどお店もレストランも少なそう」という意見がやってきました。はい、そういう話もあるかと思います。そこは世界中のバックパッカーが目指す最終地ことタイのこと、ちゃんと島内には素敵なレストランもカフェもバーも多いです。ビーチ近くにはちゃんとセブンイレブンもあります。
こういうオープンエアのレストランがたくさん。サメット島の魅力の一つとして、なぜか虫や蚊が少ないのでこういう店が気持ちいい。
カフェ、Jump at Sea。暑い日中に利用しました。
先ほど紹介した鳴き砂のSai Kaew Beachは、夜になるとファイアーショーを見せてくれるレストランや、素敵な照明のバーで溢れます。
迫力のファイアーショー。炎をぐるぐる回して楽しませてくれます。
波内際のバー。安全性は保証しませんが、水温が高い(25℃ぐらい)ので酔っ払って海にダイブできます。
世界中さまざまな場所に行きましたが、最も旅の醍醐味を感じられるミニマルな旅があるとすれば、バンコクとサメット島の組み合わせかなと思います。タイの首都バンコクには、世界のすべてがあります。綺麗なもの、汚いもの。安くてそこそこ美味しいもの、高くてめちゃく美味しいもの。洗練されたアート、自然発生的に生まれたアウトサイダーアート。子連れで安心しながら買い物できるモール、子連れでは絶対にいけない歓楽街。とにかく先進国の都市と、途上国の都市に存在するすべてが体験できるカオスがバンコクです。しかし、バンコクにないものがあります。それは静寂と自然です。そこでサメット島の出番です。サメット島は小さな島ですが、バンコクで体験できないすべてがあるといえます。そしてここには、沖縄の海のような綺麗なエメラルドグリーンの海、フィリピンの海のようなホワイトサンド、ヨーロッパの海のような気だるさ、カリブ海の海のような自由さと大音量の音楽。世界のあらゆる要素が縮図のように詰まっているような気がします。そしてこの地は、誰もが行くタイにありながら、まだ多くの人に知られていません。もしも世界のどこかに1週間いけるとしたら、私はバンコクに4泊とサメット島に2泊3日のプランをお勧めします。
いいホテルを知りたい方は、こっそり連絡ください(多くの人に教えたくないので)。
今週のオアシス Cărturești Verona(ブカレスト/ルーマニア)
Cărturești Verona。ブカレストの目抜通り、ジェネラル・ゲオルゲ・マゲル通りそば
私の憧れの本屋の一つはブカレストにあります。すごく簡単にいえばアパレルショップのような陳列にこだわった本屋がやりたいのですが、日本でいえば代官山蔦屋書店のイメージが近いですが、世界にはあのような店がたくさんあります。ブカレストのCarturesti Veronaはその一つ。
一目惚れして店内をたくさん撮ろうとしたのですが、静かな書店でたくさん撮影するのも憚れるので少ししか撮ってません。
例えば背表紙の色別に並べたコーナー。ユニクロやギャップのカラートーンみたいで楽しい。
本屋を始めたいというと、普段は本屋に行かないという人が意外と多いことにびっくりしました。私のようなライターと友達である人がこうなのですから、世間ではもっと本屋は少ないのでしょう。確かに、世界的書店は減少傾向にあると思います。
ただ、ブカレストのような、日本で言えば福岡や札幌と同等かそれ以下ぐらいの都市にもちゃんと大型書店があって、それは比較的お客さんが多いように思いました。シドニーにもニューヨークにもベルリンにも、ヘルシンキにもソウルにも台北にも、それほど大都市でなくてもバリ島のウブドにもハワイのオアフ島にも、私が訪れた都市には必ず、魅力的な書店がありました。センスが良ければ書店はまだ人を呼ぶ力があると私は考えています。
棚差しではなく面出しの陳列が多いので、つい手に取りたくなる
ここはかなり大規模な書店なので、私のような個人ではこのような規模の書店の出店は難しいですが、小さな書店にもまだ成功する可能性は残ってると思ってます。自分がこんな書店が欲しかったという書店を具現化すべく、これまで世界で訪れたさまざまな書店のことを考えながら出店計画を考えてます。楽園の地図ブックス、乞うご期待。
今週楽園で聴きたい音楽 Like this.../Akin(上海/中国)
今日も世界中で吹き荒れるシティポップ旋風の影響を多分に受けているであろう上海のミュージシャン、Akin(阿克江)のLike Thisという曲を紹介します。Akin(阿克江)の楽曲は何曲かSpotifyやApple Musicでも配信されていますが、私が最も大好きなこの曲は残念ながら中国系の音楽配信サービス(QQやNetEase)でしか配信されておらず、現代において大手配信されてない音楽というのは存在しない音楽に等しくなりつつあるので、是非とも世界のどこかには、まだあなたに聴かれていない素敵な音楽があるんだよというのを紹介したいと思います。
Akin(阿克江)はカザフ系の中国人で、上海在住です。この曲は往年のモータウンサウンドみたいなメロディを現代のエレクトロで再現したような音楽で、まあわかりやすくノリやすい曲です。曲調は明るいですが、歌詞によるとどうやらこの曲で歌われてる2人はどうやら別れを決断したようです。そしてラストダンスを踊る、こんなふうに(Like this)。今日も上海は濃い霧で覆われていて、それは私たち2人の未来を暗示しているようでした。どうやら彼はこの恋愛を綺麗に終わらせたかったようですが、そうはならなかったようです。そして、2人を繋ぎ止めるのはダンス(に暗喩される何か)であることを2人は悟ったのでした、こんなふうに(Like This)・・・。
どこかで聴いたようなありふれた恋愛ですが、上海でもこのような恋愛が日夜行われているかと考えると少し明るい気持ちになります。
今週楽園に行けない人のために スパニッシュ・アパートメント(バルセロナ/スペイン)
私たちは日々日常生活で傷ついていますが、傷の原因のほとんどは言葉ではないでしょうか。「ペンは剣よりも強い」なんて言葉もありますが、言葉というものは、もしも相手を傷つけるための凶器として考えた時、こんな強力なものはありません。
私が旅を続ける理由、特に日本国内ではなく海外に惹かれる理由は、言葉の意思疎通が不安定で、それゆえに最低限の意思疎通しかできないからかもしれない、と考えたことがあります。どうしても必要な言葉はあると思いますが(「どこにトイレがありますか?」とか)、どうして私たちは覚えなくてもいい言葉をたくさん覚えて、それゆえに傷つけあって生きるのでしょうか。
訴求とか余地とか無碍とか善処とか、損益分岐点とかKPIとか損益通貫とか二重課税とか、モラルハラスメントとかエビデンスとかコンプライアンスとかムーブとか、受け子とか出し子とかトー横キッズだとか、語彙ばかり増えた私たちは本当に幸せになったのでしょうか。ひょっとしたら、子供のようにバカでいた方が良かったかもしれません。
スパニッシュ・アパートメントで暮らす人々は、みんな母国語が異なります。そういう場所ではよくあるようにブロークンイングリッシュが共通語になっているようです。でも、人を理解するために言葉は必要ないかもしれない、そんなことを考えさせてくれるのが、スパニッシュ・アパートメントです。
ところで、この映画ではパリはとても閉塞感にあふれる都市、それに対するバルセロナが自由で先進的な街として描かれます。日本にいると、パリとバルセロナの関係性はよく分かりませんが、東京と高雄(バルセロナは首都ではないスペイン2番目の都市なので、台湾第2の都市を選んでみました)みたいな関係なのでしょうか。まだまだ研究の「余地」があります。
Google Map/Google Earthのコーナー
楽園の地図で紹介した場所をGoogle Mapでピン打ちしてます。ここから気になる記事をチェックしてもいいかも。前回・58号分まで掲載が完了しました。紹介したスポット、ピンの場所は429ありました。地図を眺めるだけで楽しいからぜひ一度見て見て。リンク先のページをブックマークしていただいてもいいかもしれません!
おわりに
台湾女スパイ「はい、そこに正座しなさい」
船長&助手「はい。。。」
台湾女スパイ「全然note更新してないじゃない! 地図も最近更新が止まってるよ」
助手「これは全部船長が悪いんです、なぜなら・・・」
船長「おい!俺は悪くないぞ。元はと言えばお前が・・・」
台湾女スパイ「2人とも言い訳しない!」
船長&助手「はい」
助手「(船長、今日は久々にお怒りモードですね)」
台湾女スパイ「聞こえてるよ!」
助手「な、なんで心に思ったことが聴こえてるでしか?」
台湾女スパイ「それがフィクションの世界なのよ。心に思ったことは読者や私にバレてるわ」
船長「(こわー)」
台湾女スパイ「誰が怖いって!?」
船長「あ、すみません」
助手「(よくみたらけっこうかわいい〜)」
船長「(私たちのために怒ってくれる愛情あふれるおかた〜)」
台湾女スパイ「それはそれでわざとらしい!」
(続く)
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