楽園の地図37号 ポルトガル・スペイン巡礼旅と、ベネチアの仮装パーティ/中馬さりのさん(後編)

感動の、スペイン、サンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂の徒歩巡礼旅と、ベネチアとイタリア語の魅力
船長と助手 2024.05.03
誰でも
Porto, Portugul (Photo by Sarino Tyuman)

Porto, Portugul (Photo by Sarino Tyuman)

もくじ

はじめに
今週のスペシャルゲスト 中馬さりのさん(後編)
 〜古き良き街並みに溶け込む息吹:ポルトガルとスペインの国境の街・カミニャ
 〜ベネチアの仮装パーティと、イタリア語の魅力
 〜今後はロシアとチリに行ってみたい
 〜海外で学んだ自己表現の重要さ
今週楽園に行けなかった人のために 映画・星の旅人たち (サンティアゴ・デ・コンポステーラ/スペイン)
Google Map/Google Earthのコーナー
おわりに

はじめに

旅人に知っておいてほしい円相場の話

物書きにとって最高峰の表現手段は今も昔も本を出版することです。すべての書き手は自分の書いた本がベストセラーになることを目指していると言っても過言ではありません。しかし、本の出版はせいぜい年に1、2冊が限界ですが、メールマガジンの場合、週に1回何かしらの内容を届けることができます。ひょっとすると、長文の本を年に1、2冊出すよりも、毎週メールを送った方が人々に与える影響は大きいのではないかと思っています。親に言われた小言は自然と身についていると思いますが、それは頻度が多いからです。どんなありがたい言葉でも年に1、2回しか言われなければ覚えていないかもしれません。毎週伝えれば、伝えにくいメッセージでも伝わるかもしれません。

今週伝えたいメッセージ。それは、円相場についてです。4月29日の深夜、1ドルは159.39円をマークしました。日本政府が為替介入した可能性について報じられていますが、とにかく5月2日現在は154〜155円台をうろついています。とにかく円が安く、弱くなっているということです。これはニュースで経済的な問題と紐づけられていますが、旅をする人にとっても死活問題です。

ここからは私の私見に過ぎませんが、残念ながら日本円の価値は今後もしばらく下がり続けるのではないかと思われます。日本政府が抱える借金、諸外国と比べた低金利、日本の貿易収支の赤字化、人口減少、円が下がる要素はたくさん挙げられますが、上がる要素は残念ながら思いつきません。日本のマスコミはドル円相場ばかり気にしていますが、ユーロに対しても、英ポンドに対しても、中国元も韓国ウォンもタイバーツもインドルピーも豪ドルも、とにかくほぼすべての通貨に対して、円の価値は下がっています。

日本はさまざまな問題を抱えつつも、これまでなんだかんだ円の強い国でした。わずか13年前、東日本震災があった頃、日本は円高でした。阪神大震災の時も円高でした。なぜか。大震災や戦争など有事の場合、安定的な通貨である円が買われたからです。世界で安定的な通貨と言われたのは、他にスイスフランなどありました。日本円は世界の人にとってちょっと前まで「持っていたい良い通貨」だったわけです。残念ながら、今は世界の人にそう思われてないようです。最大の原因は日本の貿易収支が赤字になったことが挙げられます。日本はかなり前から借金まみれでしたが、1.借金の大半を日本国民が負担していて、諸外国に債権があまり買われていないこと。2.日本は貿易黒字国であること。によって、日本の借金は問題ないとされていました。現在の円安は、貿易黒字国に危険信号が灯ったことが大きいと思います。あまり知られていないかもしれませんが、日本は2021年から貿易赤字の状態です。しかし日本が海外に投資を行っていて、その投資の収益を含めると黒字であることから、かろうじて総合的な収支は黒字です。家計で例えるならば、お父さんの稼ぎよりも出費の方が多い状態だけど、親の代から引き継いだ不動産の家賃収入があって、それを含めると黒字、みたいな状況です。経済について興味ない人でも、このぐらいのことは知っておいて損はないかと思います。

さて、そんな状況を生きる私たちに何ができるのでしょうか。私からの提案は2つあります。1つ目。すでにある程度の貯金を持っているという方。そういう方は、今後は日本円で貯めている貯金を、他の資産に移すことも検討した方がいいと思います。日本は長いことデフレでしたので、こういったことはあまり話題になりませんでした。怪しい投資情報は煙たがれました。現金で持つことが、結果的に最も安全だったからです。でも、先ほど説明した通り、今回の円安は貿易赤字を根拠にした本物のパラダイムシフトで、短期的なトレンドではないと私は考えています。世界を旅する人であれば、円をよく行く国の外貨や、世界中で使えるドル(ユーロでも可)に変えておくのもありかと思います。なお、私は射幸性の高いFXをやるのは反対の立場です。2つ目。これは資産があってもなくても、すべての人に当てはまることです。本業でも副業でもいいので、何か外国人のお客さんを相手にできる商売を身につけておくことです。円が弱くなるということは、相対的に他国の通貨が強くなることを意味します。私の場合は民泊事業を行ってますが、これは円安に強いビジネスです。どんな小さなものでも構いません。外国人に対して売れるものが自分にないか、なければ身につけられないか、自分のスキルを見直してみてください。

今日は親の小言のような説教くさい内容になってしまいましたが、先週に引き続き、中馬さりのさんにゲストに来ていただいて、楽しい旅の話をしたいと思います! オープニング、カタい話でごめんね。ここからやわらかくいきますので。はにほへほー。

今週のスペシャルゲスト 中馬さりのさん(後編)

今週も先週に引き続き、ライター、逆旅出版という出版社の代表、旅のYoutuber、そんな多様な肩書を持つ中馬さりのさんをゲストにお迎えして、先週の話の続きを伺いました。

中馬さりのさん

中馬さりのさん

中馬さりのさんプロフィール

逆旅出版CEO。1992年東京生まれ。学生時代からライターになり、25歳で独立しフリーランスのライターに。ライターとして燃え尽きかけるも、旅に出ることで自分を取り戻す。2022年には出版社を立ち上げ、自らCEOに。Youtubeもやってます。(X

古き良き街並みに溶け込む息吹:ポルトガルとスペインの国境の街・カミニャ

:先週はアジアの楽園ということでベトナム、タイ、それから日本国内の話を聞きましたが、ヨーロッパも色々行かれたんですよね?

:真っ先に思い浮かぶのはポルトガルです! ポルトガルは夜遅くまで明るくて(夏は夜9時ぐらいまで明るい)楽しかったです。これは絶対幸福度ランキング高いぞ! って思って調べたら全然低かったんですよ(笑)。不思議です。

:南欧はいいよね。スペインもいい国だし、イタリアもいいし。

:そうですね。ポルトガルは、サンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂っていうスペインの巡礼地があるんですけど、ポルトガルのリスボンから入ってポルトへ行って、そこからサンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂まで歩きました。

:YouTubeの動画を見ましたよ。大変そうだった。

:大変でした。なんでこんなことしちゃったんだろうと思って(笑)。でも、飛行機とか電車とかだったら多分通り過ぎてたような小さな町に寄ったけど、すごく好きな街がありました。ポルトガルとスペインの国境にあるカミニャって港町なんですけど。ご飯もおいしくて。

:魚料理ですか?

:タラが名産です。おいしかったな〜。

カミニャで食べた激うまタラ(中馬さりのさん提供)。

カミニャで食べた激うまタラ(中馬さりのさん提供)。

:ポルトガルは日本と昔から国交があって、出汁(だし)文化があるらしいんですけど、すっごい美味しくて。

:やっぱり魚が獲れるところは食事が美味しいよね。内陸だと肉しかないから料理の幅が限られてくるよね。やっぱ肉も魚も食べたいじゃないですか。

:確かに。しかも味付けも肉料理だけのところより、幅が広い気がします。カミニャが好きなのは、古き良き街並みをそのままにするでも建て替えるでもなく、なんか古い場所にそのまま住み着いちゃったみたいな感じで。

:というと?

:教会みたいな見た目の場所があって、中に入ると美容室になってたり、学校だと思ったらゲストハウスとか。だから、建物を壊して自分たちの街を作るんじゃなくて、そのまま昔の建物を借用してる感じが面白くて。

:へえ。ヨーロッパの人は古いものを大事にするよね。だから、建物も本来の用途とは違っても、またここで新しいことをやろうかっていう感じだよね。

:そうですね。あと、巡礼の道中っていうのもあるかもしれませんが、人も優しくて。喋ってるとだんだんこっちに合わせた言葉遣いに変わっていくんですよ。アジアから来たなって思ったらアジアの話題が入ってたりとか、日本人なんだって知ったらまた変わったり。私だけじゃなくて、「あ、この人はスペイン人だ」って思ったら、だんだんスペイン語になっていったりとか。

:好奇心が強くて、いろんな国のいろんなものを学ぼうとしてるのかな?

:そうですね。なんか人口1万6000人の小さい街なのに国際的です。それこそ国境だからスペインに渡る船があるんですけど、船というよりボートなんですよ。商船とかは全くないですし。

スペインに向かうボート。

スペインに向かうボート。

:なんかすごい光景だなこれ。これで国境超えるのか。でも本当に昔のヨーロッパって感じだね。

:そうですね。

:そもそもポルトガルがかなり田舎だもんね。リスボンとはいえそんなに都会じゃないっていうか。

:そうですね。そもそもポルトガル自体が日本より小さくて人口も少ないですし。太陽が沈まなくて、みんな一生ハッピーアワーしてて(笑)。

カミニャ。

カミニャ。

:もう一つ、これはポルトガルじゃなくて隣のスペインなんですけど、ビーゴって街が良かったです。それも港町です。クルーズで世界1周の人とかが立ち寄る場所らしいです。

:スペインってバルセロナのイメージが強いから、あっち側行かないよね。裏側というか。

:そう。左上の方もいいですよ。サンティアゴ・デ・コンポステーラも含め。タイのチェンマイや日本の京都みたいに、聖域って感じがするんですよ。カフェとかも多いですよ。

:ヨーロッパのそういう小さな街のカフェって、地元のおじいちゃんとかおばあちゃんとかがのんびりしてたりしない?

:してますね(笑)。

:ヨーロッパって老夫婦が仲良くしてるるのがいいなと思って。日本の老夫婦ももちろん仲いい夫婦いっぱいいると思うんだけど、ぱっと見はわかんないっていうか。

:オープンですよね、夫婦の仲の良さもですし家族の仲の良さも。外国人の人と仲良くなると、その人の親とか彼女とかの写真を見せてくる人も多いですよね(笑)。

:あるある。あれは日本人はあまりやらないよね。アジア人はやるけどね。タイでも、なんか「これオレの彼女なんだ。かわいいだろ」とかドライバーに言われたり(笑)。

:あります(笑)。

:私も日本人だからあんまりそんな見せびらかしたりとかしないけど、マインド的にはそういう社会の方が楽しそうだなって。

:思います。それでいうと、イタリアなんかは素晴らしかったです。

ベネチアの仮装パーティと、イタリア語の魅力

:イタリア人はオープン?

:オープンだと思います。街を歩いてて普通に褒められる。

:ナンパっぽい感じじゃなくて「お前のそのシャツCOOLだな」みたいな。

:そんな感じ(笑)。別にその次のアクションとかないんですよね。

:私はたまに旅先で日本のシャツを着てるんですよ。NINJAって書いてあったりとか(笑)、浮世絵みたいなのとか、寿司のシャツも持ったりとかさ。それでイタリアの街を歩いたら、めちゃくちゃ話しかけられる。「You come from Japan!」って。

:それは大人気になりますね。

:Sushi! Sushi!って。話しかけられたい時はそれを着たりする。どこから来たとか説明しなくて楽(笑)。

:話しかけてくれますね。タイで話しかけられて、話しかけてくれた! って思ったらその方イタリア人だったり、よくある気がします。イタリア人はイタリアにいなくても話しかけてくれるんだって。

:確かに私もサムイ島でイタリア人夫婦と喋ったな。なんでイタリア人ってああなんだろうね。

:なんか言葉に秘密があるのかなと思ってイタリア語を一瞬勉強したんですよ。そしたら褒め言葉が多かったんですよ。だから、使うし、言い慣れてるし、みたいなところあるのかなってちょっと思いました。

:そういうのあるのかもね。あと、男性名詞と女性名詞とかあるじゃない? フランス語もそうかな、なんかラテンっぽい感覚だなって思う(※1)。日本語だと、大阪の人が飴にちゃんをつけて「飴ちゃん」(女性名詞)にするけど、そういうノリだよね(笑)。

(※1)イタリア語は名詞が男性と女性に分かれている。例えばスプーンは男性、フォークは女性。空は男性、雲は女性。基準はまったくわかりません。

:ははは。イタリアはローマとミラノ、ヴェネチア、フィレンツェに行きました。4都市。でも、イタリアが人生初海外だったので、醤油味が恋しすぎてホテルでギャーギャー言ってたら、日本人のギャルが助けてくれました(笑)。

フィレンツェ。

フィレンツェ。

:イタリアが人生初海外って珍しいんじゃない?

:イタリアに行きたかったんですよ。イタリア語が好きだなと思って。イントネーションがヨーロッパ圏の中では日本語に近いというか、なんか多分平らな方だと思うんですよね。巻き舌とかあったりするんですけど。音としてすごい好き。

:それこそ、ヨーロッパでもドイツ語とかロシア語とか怖い感じだもんね。

:勢いがすごいですよね(笑)。

:ツバが飛びそうだなって。イタリア語は落ち着いた感じ? スペインとちょっと似てるよね。スペイン語とイタリア語は似てるかもね。グラッツェ(イタリア語でありがとう)とグラシアス(スペイン語でありがとう)みたいな。

:似てますね。

:ポルトガル語も似てるよね。音楽のボサノヴァはポルトガル語の音楽で、なんかボソボソ歌ってるイメージがあるじゃない? あっちの方ってボソボソって感じ。日本語にちょっと近いね。

:ボサノヴァはポルトガル語なんですね。やっぱり、あっちの文化好きかも。

:ボサノヴァはブラジル生まれだけどブラジルの公用語はポルトガル語なんで。イタリアの四つの都市ではどこが一番良かった?

:好きなのはベネチアでした。

:ベネチアはすごいよね。島だもんね。やっぱり港が好きなんじゃない?

:わたしは海や港が好きなんですよ。港とか、あとなんかベネチアは沈んでるって言うじゃないですか(ベネチアは目下地盤沈下中)。いつか消えちゃう島とか愛おしくて大好きなんです。

:確かにベネチアは不思議な場所だよね。なんで最初にあそこに住もうと思ったのかなって。大陸じゃなくて島だもんね。昔は橋もなくて不便だったはずで。大陸より島の方が都会って不思議。

:そうですね。しかも、仮面舞踏会の仮面のお祭り(※5)のときに合わせて行ったんですけど、なんかその雰囲気もすごい好きでした。

(※5)ベネチアでは2月末から3月初めまで2週間、仮面をつけた人々が集まるカーニバルが行われます。

:祭りの最終日に仲良くなった仮面の人がいて。

:イタリア人?

:違う国でした。片言の英語でやり取りして仲良くなって、「もう帰るけどこの衣装と仮面いる?」って言われて、仮面をもらいました(笑)。

仮面をくれた人。人種は不明。

仮面をくれた人。人種は不明。

:そっか。何かそういう思い出があると、その街の印象って大きく変わるよね。やっぱり人なんだなって思う。

:確かに。衣装はさすがに持って帰れなかったんですけど、もらった仮面は日本に持って帰ってきました。

:仮面祭りって、みんな仮面をかぶって、で、何をするの?

:ハロウィンみたいな感じで仮面つけて仮装します。それこそロココっぽい感じのお洋服で。大道芸の人がいてショーを見たり。あと、ブースみたいな感じがあって写真撮りあったり、コミケみたいな感じです。一緒に写真撮ったり、何かポージングとか一緒してくれたり。

食事も衣装と仮面で。

食事も衣装と仮面で。

仮面ショー

仮面ショー

:仮装するだけの人もいれば、演奏してる人とか絵を描いてる人もいて。

:でもベネチアとか1人で行ったらちょっと寂しくなったりしない?

:1回目は大学生のとき卒業旅行でお友達とみんなで行ったんですよ。2回目は1人。やっぱ楽しみ方が違いました。1回目は初海外だったのでハプニングだらけで、早く帰りたいと思ってました(笑)。食べ物全部トマト味だし(笑)。あと初めて飲む硬水にびっくりして。これは私のレベルがまだまだだわって思って、もう一度行き直したんですけど、2回目はちゃんとイタリアを楽しみました。

:2回目はトマト味ばっかりだとはならなかった?

:ほうじ茶を持っていくんです。

:ほうじ茶!

:ほうじ茶のパックを持ってって飲めば大丈夫なんですよ。日本人の味覚取り戻せるんで。

:緑茶じゃ駄目なの?

:緑茶でもいいんですけど、なんか、ほうじ茶の方が元気になります。

:ちょうどいいのかな? ほうじ茶が。

:かもしれないです。

今後はロシアとチリに行ってみたい

:まだ行ってない場所で、これから行きたい場所はありますか?

:ロシアでボルシチを食べたいです!

:東京でもロシア料理は食べられるよ。

:一軒しか知らないんです。三軒茶屋のところ(※サモワール。三宿交差点から近いです)。

:じゃあそれ入れて4軒知ってるわ。吉祥寺(カフェロシア)と新宿(スンガリー)と高田馬場(チャイカ)。

:ロシア料理事情に詳しくないですか? (笑)

:ウクライナ料理もあるよ。それは代々木八幡(ビストロジロー)。ていうか、ロシアはわからない国だよね。行かないとわからないことがいっぱいありそう。

:社会主義国独特の雰囲気があるって聞いて、それを体験してみたいです。

:寒そうだけどね。モコモコな服着ていかないと。あ、でもロシアで温かい服を現地調達するのも悪くないな。防寒しっかりしてそうだから日本に帰ってきても使えそう。

:ロシアの服ってロシア帽しか知らないです。あと、チリにも行きたいです。バルパライソっていう街があって、そこに行きたいです。

:バルパライソも港町だな。あなたは港町が好きだね(笑)。

:ほんとだ。意識してなかったです。でも楽しいみたいです。

:でもまったく一緒。私も港町が大好き。

:本当ですか。港町は旅人が息がしやすいんじゃないですか?

:他の場所より少し自由な雰囲気があるのかな? だから韓国とかだと、みんなソウルに行って帰ってくるじゃない? プサンが結構いいんだよね。

:わかります!

:プサンが好きで。ソウルには港がないからね。イギリスもロンドンも楽しいけどリバプールもいいし。港があるとそういう独特の良さが出るよね。

:確かに。

:でもチリってイメージがないよね。

:ないですね。南米には縁がなくて。なので体験したいです。

:チリは南米の中では安全らしいよ。

:みたいですね。

ポルトガル、ポルトの街並み。

ポルトガル、ポルトの街並み。

海外で学んだ自己表現の重要さ

:ところで、女子一人旅で、どうやって危険を防いでるんですか?

:わたしは普段からめちゃくちゃ石橋を叩くタイプなんで危ない目に遭ったことがないんですよ。お酒とか飲む時も、作るところを見てますし、絶対に席を立たないようにしてます。飲む杯数をちゃんと数えてて、自分が酔わないところでやめます。

:これ以上飲むとやばいってところでやめるわけだ。

:あと、お店もできるだけ路面店というか、何かあったらすぐ逃げられるところにします。でも、「海外旅行怖くないですか?」とか、「危なくないですか?」っていう人は、日本で危ない目に遭ったことがない幸せな人なんだと思うんです。

:なるほどね。日本でもそういう目にあうときはあうし。

:とにかくキッて顔して「NO!」っていうのを大事にしてます。

:想像つかないね。さりのさんはいつもニコニコしてるイメージだから。

:キッてします。日本人代表として舐められないようにと思って。

:海外では怒った方がいいよね。日本にいると怒らない方がスムーズに行くことが多いけど、海外は怒る練習だよね。

:そうですね。自分の意見を言う練習だと思ってます。追い払うとかじゃなくて、「私は要らない」って言う練習だと思ってる。

:海外って、一番思うのはやっぱ主張することの大事さっていうか。昔は英語もほとんどわからなかったんだけど、ある時、I want to〜って言い回しを覚えて、それで旅が変わったんだ。I want to eat lunchとかI want to stay hereとか。とにかくI want to〜、 I want to〜ってずっと言っていれば旅はだいたいうまくいくって気づいて。だから、何かを欲するのが人間の根源なのかなって。望みを伝えるってすごい大事だね。

:日本だと相手をおもんばかる余裕があるけど、逆におもんばかりすぎて生きづらくなることもありますね。

:恋愛とかも、向こうの人って好きだってちゃんと伝えるじゃない。日本人は直接的な表現を使わずに相手を誘導していくイメージがあって。心の読み合いが難しいというか。そういう意味では、自分には海外の方が性に合ってると思う。

:私も割とそれで息がしやすいなってなっちゃったんですよね。海外旅行し始めるようになって。こんなに思ったことをそのまま言っても、ポジティブな言葉をそのまま言っても平気だったりする。なんかあんまり褒めすぎると、なんか気遣わせてるって思わせちゃったりとか、裏があるのかないのか、みたいな感じになることが。海外だと、脳で思ったことをそのまま口に出していいっていうのが楽すぎて。

:確かに。これからもどんどん意思表示して、NOと言えたり、褒めたりできる日本人になりましょう!

中馬さりのさんは、とても頼もしく、かっこいい女性だと私は思います。そんな彼女が、今後どんな旅をして、どんな仕事をして、どんな人生を歩むのか。とても楽しみです。かっこいい女性とは、私が思うに「主体的な自分」がちゃんとあるということだと思います。主体的な自分がなぜあるのか。それは彼女が読書家であることと不可分ではないと思います。ひょっとすると、本を読み続けることと旅をすることは主体性を持つ上で重要な役割を持っているのかもしれません。私が旅を勧める理由を再確認できた気分です。みんな、旅に出て自分という存在を持ちましょう。本も読みましょう。本が難しければ、当マガジンを週一で読んでくださいね(笑)。

(おわり)

今週楽園に行けなかった人のために 星の旅人たち(サンティアゴ・デ・コンポステーラ/スペイン)

死んだ息子が果たせなかった聖地巡礼の旅をする父

今日紹介する映画は、先ほどの中馬さりのさんが体験した、サンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂への巡礼の旅をテーマにした映画です。今回のインタビューに添える記事としてピッタリと思い、この映画を紹介させていただきます。

旅が好きだった息子が、突然外国で死んでしまった。ショックを隠せない父は、まずは息子の亡骸に会おうと現地へ向かいます。そこで知ったのは、息子がスペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラに向かう巡礼の旅の途中で亡くなったということでした。父はある決意をします。私が息子の亡骸とバックパックを持って全長800キロの巡礼旅をしようと。息子は40歳と本編で話していたので、この父親は若くても60代でしょう。普段旅に出ない高齢者に、そんな過酷な巡礼旅はできるのでしょうか。そもそも息子はなぜ巡礼旅をしようとしたのでしょうか。息子に導かれるようにやってきた父ですが、旅をする中で、ある変化が訪れます。旅に出るのは、たとえ60代であっても遅くはありません。若者にしかできない旅があるように、その年齢にしかできない旅も、またあります。サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼旅というものがよくイメージできなければ、四国のお遍路巡りのようなものと考えてもらえば構いません。お遍路と同じように、若い人も、老いた人も、何かを見つめ直す、あるいは単に楽しみのために歩きます。

この映画が素晴らしいのは、息子の死と巡礼旅というある意味わかりやすいテーマを単純な感動に持っていかないことにあります。孤独な父の旅になると思いきや、途中で知り合うクセの強い同行者のおかげで、旅はかなり珍道中になります。Amazonではこの映画はコメディに分類されていましたが、確かにコメディ要素は多分にあると思います。この映画は単なる御涙頂戴ものとも、バックパッカー同士の友情万歳といった単純な結論にはいきつきません。娯楽作としてみた場合少しおとなしすぎるかもしれませんが、大人の話になっていると思います。

現在、Amazonプライム会員は無料で見られるようです。この機会に、中馬さりのさんも旅した巡礼旅についての映画、見てみませんか?

星の旅人たち(Amazonプライム

Google Map/Google Earthのコーナー

メールマガジンで紹介した場所や、アーティストの活動地、映画の舞台をGoogle Earth/Google Mapで地図にしてみました。(ちゃんと最新号まで更新済み!)

回を追うごことにピンが増えていくのでお楽しみに。ある意味これが本当の楽園の地図。

おわりに

助手「サンティアゴ・デ・コンポステーラ、サンティアゴ・デ・コンポステーラ」
船長「どうしたんだ早口言葉のように一つの言葉を繰り返して」
助手「サンティアゴ・デ・コンポステーラって口に出したくなる地名ですよね」
船長「スペイン語の固有名詞って、なんか言いたくなる言葉が多いよね。ガルシア・マルケスとか」
助手「アントニオ・バンデラス
船長「オルケスタ・デ・ラ・ルス
助手「カルロス・カスタネダ
船長「丸山ゴンザレス
助手「ルチャリブレ
船長「マラドーナ
助手「フランシスコ・ザビエル
船長「ピンチョス」
助手「アヒージョ」
船長「パエリア」
助手「おなか空いてきたなあ」
船長「出前でも取るか」
助手「はい! お寿司にしますね」
船長「この流れはパエリアやろ」

(つづく)

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