楽園の地図第90号 人生の絶頂期に仕事を辞める方法/ゲスト:新野文健さん(後編)

カンヌの広告賞を受賞した新野さんが突然会社を辞め、現在到達した場所とは?
船長と助手 2025.05.16
誰でも
Chow Kit Market, Kuala Lumpur, Malaysia

Chow Kit Market, Kuala Lumpur, Malaysia

もくじ

はじめに ココ・シャネルの名言
今週のゲスト 新野文健さん(後編)
〜「旅は自分を拡張する」
〜ドバイの金持ちは暇そうな男子高校生に似ている
〜社会をドロップアウトしたものあるある
〜自分のやりたいことと、社会との折り合い
〜あらやんさんの今後の目標は「犬マンション」!?
〜独立してうまくいく人、ダメになる人の違い
おわりに

はじめに

ココ・シャネルの名言

時折、自分にそれまで興味なかった人に興味を持つことはないでしょうか。最近私はココ・シャネル(例のシャネルを作った人物ですね)に興味を持って調べてみました。私はどちらかというとハイブランドに縁のない人生を送ってきたのですが、新宿の近くに住んでからというものデパートに出入りする機会がいやでも増え、なんとなくそういうことに興味を持って、そうとなれば割と調べてしまうオタクっぽさから、ココ・シャネルの人生を調べていました。いやはや、偉人というものは誰でもそうなんですが、なかなか数奇な人生を送った人です。私はココ・シャネルの発した言葉で以下の言葉が好きです。

実際にどう生きたかということは大した問題ではない。大切なのは、どんな人生を夢見たかということだけ。
ココ・シャネル

このあと、「夢はその人が死んだ後も生き続けるから」と結ばれるんですけど。私たちはいつも実態を追ってしまいます。つまり、少しでも多くの収入を得て、少しでもネット上で注目されたくて、少しでもイケメンの彼氏を探し、とにかく少しでもマシな人生を目指して、私たちは実態を追いかけていくのです。かくなる私もそうです。でも、ココ・シャネルは現実世界の向こう側を問題にしているのです。これは真なる自立の鍵なんじゃないかと思いました。例えばコロナ禍中、私たちは海外に行くことはままなりませんでしたが、でも私の世界地図は広がり続けました。頭の中だって、どこにだって出かけることができます。ココ・シャネルの生きた時代、パリは戦時下となり、ナチスドイツに占領されるという出来事があります。ここでの彼女の対応が戦後物議を醸すことになりますが、ともあれ服飾デザイナーである彼女にとって戦争は喜ばしいことではないことは明白でしょう。また、さまざまなことが思い通りにならない状況を考えると、彼女の言葉に重みが出てきます。

自分の可能性を信じて行動に移すこともまた素晴らしいですが、今は夢見ることの価値が忘れられつつある気がするので、そんなときこそ彼女の言葉を思い出して、気高く生きていこうと思いました。

さて今週は、先週に引き続き、広告業界を辞めて、ライフシフター(LIFE SHIFTER)という肩書きを持ち、あえて定職を持たず生きる新野文健さん(通称:あらやん)をゲストに迎えて、人生のセカンドキャリア、サードキャリアについて再び話を伺っていきます。

先週は、一度社会から離れて、見つけたものについて話した印象ですが、今号ではそんな新野さんが再び社会との接点を模索する理由と、今後のビジョンについて伺います。

今週のゲスト 新野文健さん

新野文健さん

新野文健さん

新野文健さんプロフィール

インターネットの黎明期よりデジタルマーケティング分野でキャリアをスタート。NEC ecotonohaでアジア初のカンヌ広告祭サイバー部門グランプリを受賞するなど、受賞歴も多数。2017年5月に退職後、新たな社会を見据えて「ライフシフター」として活動している。通称:あらやん。

オフィシャルサイト→ https://lifeshifter.me/

「旅は自分を拡張する」

 あらやんさんと私の共通点として、結構、旅行にも行かれてるじゃないですか。あらやんさんにとって旅行はどんな意味があると思いますか。

 何だろう。自分の価値観をちょっと拡張してくれるっていうか、ある意味、自分になかった価値観とかを取り込めたりする感じですかね。コーチングやってるのにちょっと近いのかもしれない。いろんな人の価値観が体感できるって言いましたけど、旅行に行くと日本では当たり前って思ってたようなことがそうじゃなかったりっていうことを目の当たりにして、それによる影響みたいなものが自分にとって結構大事なのかな。

 2年ほど前に、ライターの先輩の嵐よういちさんから「ウクライナに行くからついて来て」って言われたんです。ウクライナの国境に、戦地から逃れてきた人が避難しながら暮らしてる地区があって、そういうところを取材に行くって。誘われなければ絶対に行かないと思ったので同行したら、そこはウクライナの国境が近くにあって何だかのんびりしてる割と牧歌的な田舎町っていう感じなんです。レストランがあったので入ると、日本人か!って言って、めちゃくちゃ感謝されたんですよ。

 現地の人に?

 そうです。大したことない値段の食事をしたんですが、日本人が来た、お金を使ってくれたっていうことが嬉しいみたいな。行く前に抱いていたイメージと全然違ったなっていうか、最初の自分の感覚が間違ってたなって改めて思いました。これは極端な話ですけど、旅に行くとそういうことってありますよね。今、あらやんさんの話を聞いて、自分のそれまでの印象が引っくり返るとかそういうことはあるなって思いました。

 僕は大体、海外旅行に行くときは現地の知り合いを頼るか、いないときは「ロコタビ」っていうサービスでを使ってます。現地で日本語を話せる人と旅行者がアプリ上でマッチングして、フィーを払って半日ガイドしてもらうことができるシステムです。現地のライフスタイルの話や、日本との違いとか常識が通じない部分とかを毎回聞くのがいいんですよね。

ドバイの金持ちは暇そうな男子高校生に似ている

 これまでの旅の体験で世界がひっくり返った経験は何かありますか?

新 たとえば、中国の深圳に行ったとき。コロナのちょっと前だったんですけど、支払いが全部QRコードなんですよね。

 Wechat Payとか。

新 Alipayとか。滞在中に現金を使ってる人を見たのは1回だけ。それも多分観光客の人が使ってるとこを見ただけでした。でも海外から来た人って、Alipayとかにチャージできないんですよね。

 システム上の問題で。

新 抜け道みたいな方法でやる方法もなくはないんですけど、簡単にはできないから現地ガイドの人に現金を渡して代替で送金してもらったりして。こんなにもキャッシュレス社会が進んでるんだっていうのは、ちょっとした衝撃でしたね。日本でPayPayとかがここまで普及する前だったんで、衝撃は大きかったですね。

 それまでは、中国本土は日本からするとちょっと遅れてる印象がありましたよね。だけど、ある部分では日本よりもはるか先に行ってるところもあるし、深圳なんて世界のドローンの7割を作ってるっていうハイパーシティですしね。それまで常識と思ってたことが、がらっと引っくり返る機会は、旅に行くと多いんですかね。

新 今、ちょうど大阪・関西万博が始まってますが、ドバイ万博のタイミングでドバイにも初めて行きました。そこでも現地の人に話を聞いたんですが、お金持ちばっかりの国みたいなイメージあるじゃないですか。

楽 印象はありますね

新 でも実際はいろんな国からかなりの数の労働階級みたいな人たちが来ていて、そういう人たちがちゃんと暮らしていけるような価格帯のお店もいっぱいあるんですよ。そんなにめちゃめちゃお金持ちばかりっていうわけでもないし。白い民族衣装を着たお金持ちの人たちって、向こうでエミラティって言うんですけど、涼しいショッピングモールのカフェとかに4、5人でいるわけですよ。働く必要がほぼなくてお金もあり余ってて、めちゃめちゃ死んだ魚の目をしてるんだよって言われて、見たら本当にめっちゃ退屈そうでした。

楽 僕も10年以上前にドバイに行ったことがあるんですが、まさにそういうことを思いましたよ。ドバイは確かインド人がめちゃくちゃ多いんですよね。インドから出稼ぎで来ている労働者が多くて、それこそブルジュ・ハリファとかは有名な建設物ですけど、ああいうのを肉体労働でつくってるのは大体インド人だとか。ドバイの人は、何なら何もしなくても基本的にはドバイの国民っていう階級であればもう収入1000万円みたいな感じで。不思議な社会ですよね。

新 名義貸しみたいなことするだけで、勝手にその名義収入みたいな感じでお金も入ってくるんですってね。確かにやることないし、外はめちゃめちゃ暑いから散歩もできない。

 イスラム教徒って表向き、エンターテインメントって認められてないらしいです。

新 そうなんだ。

 ドバイに住んでる日本の駐在員から聞いた話なんですけど、サウジアラビアとかはすごく厳しくて、ドバイは少しましだけど中東だからかなり敬虔なイスラム教徒も多くて、エンタメは禁止しているそうです。だけど物を買うのはエンタメではないから、モールはOKなんですよね。だからみんなモールに入り浸ってる。暇な男子高校生みたいに(笑)。

新 そうそう!(笑)

 モールの中で、男性同士が手をつないでいるところもよく見ました。仲のいい同性が手をつないで歩くのはごく普通のことだそうです。常識がぶっ壊れる瞬間ですよね。

新 何だか、お金と平和な社会があるだけでも別に幸せとは限らないっていうのを体感しますよね。

楽 インターネット用語でいうと上級国民ですよね。だけど彼らには彼らの悩みがあるっていうか、退屈そうですよね。羨ましいとは思わなかった。

新 そうなりたいかっていうと、諸手をあげてなりたい!って言えないものがありましたね。

社会をドロップアウトしたものあるある

 私は今は自分が起業した会社の非常勤役員のような立場なんですよ。なのでほぼフリーターみたいな感じで。一方でフリーランスとして何か新しい仕事を受けようってなったときに、それまでの自分のキャリアに応じた仕事しか来ないじゃないですか。私だったらライターの仕事とか編集の仕事とかは頑張ればもらえますが、そうじゃない仕事もやりたいんです。でも、それって難しいですよね。

新 難しいですよね。

楽 よかった、同じ悩みがあった(安心)。

新 めちゃめちゃ経験してます。友達もよかれと思って、広告代理店でやってたときのような仕事とかを「こういうのあるんだけどどう?」って当初は声掛けてくれたんですけど、それをしたくなくて辞めたんだからっていう葛藤がありましたね。

楽 周りの人は、優しさだったり、頼りにしてくれて声を掛けてくれるんだけど、ちょっと別のことがやりたいなっていう感じ。あらやんさんは、ウェブ広告以外の仕事も受けてるんですよね。

新 新規事業開発のお手伝いとか。

楽 それって前職のキャリアが生きてるんですか。

新 半分くらいは生きてるかな。新規事業に対してアイデアみたいなものが必要だし、いろんな協力会社とかステークホルダーみたいな人に説明するときのプレゼンテーションスキルとか、新規事業がちゃんと成立するのかみたいなマーケティングの知識も使えるし、半分ぐらいのスキルは使えるって感じです。

楽 半分ぐらい自分のスキルで、半分ぐらい新しいことだったら、ひょっとしたらできそうですよね。あとは、あらやんさんを信用してくれたからそういう仕事が来てるんだろうな。

新 それで言うと、会社員時代の仕事の知り合いが転職してそういうところに行ったので、その人自身も半分くらい前のスキルセットを生かしてるってことなんでしょうね。

楽 やっぱり人づてなんですね。いきなり見ず知らずのライフシフターに、全然やったことのない新規の案件は来ないですよね。当たり前かもしれないですけど、過去のキャリアでしか見てもらえないというか。20代の頃なら分からないですけど、おじさんに急に新しいことって世の中は頼まないと思うし。これが今の悩みです。もっと、やったことない仕事がしたい(笑)。

新 それはおじさんに与えられた試練っていうか、同じ状況で例えばお金も全然安くていいよっていうスタンスでいたとしても、やっぱりおじさんには頼みにくいですよね。

楽 気を遣いますよね。私も編集者の仕事をやり始めた27、28ぐらいのとき、発注するカメラマンとかライターとかは、自分より年下を選んでました。本当はそんなことないんですけど、自分の好きなようにできなさそうな気がして、若い人のほうが言いやすいっていうのはありますよね。あと、その時にちょっと年上のカメラマンが言ってたんですが、賞を取ったら仕事が減ったって。普通は賞を取ったら仕事が増えるはずなのに、その人は賞をとった偉い人だからという理由で誰も雑に発注してくれなくなったって。それを聞いて、人生って、ただ上に上がればいいだけじゃないんだなって思いましたよ。

新 そういうことってよくありますよね。

 だから私は、急激に売れた人とかに優しくしてるんですよ。きっと誰にも言えない悩みがあるはずだから。あ、仕事の話だった。それまでのスキルセットとちょっとした挑戦。それから人間関係が仕事を持ってくるっていうこと。この二つですね。

新 コーチング業界は年齢の幅がすごく広くて、僕より上の超ベテランコーチみたいな人もいるし、最近始めた僕より年上の人もいるし、すごいベテランの若い人もいるし、カオスなんですけど、それがいいトレーニングになりますね。

 あえて若い人の視点でアドバイスをもらいたいっていうのはありますよね。

新 自分が習ったコーチングの先生も自分よりずっと若い人だったし、僕のマイコーチも自分より年下の人もいたし。

楽 面白いですね。それもまさに人生100年時代っていうか、序列じゃないんですよね。コーチングにますます興味がわきました。FINDERSというサイトでインタビューを受けてから7年経ちますが、振り返ってみて何か思うことはありますか。

新 自分自身でも、そのときからずっと同じ路線で行くだろうとは当時はまだ確信が持ててなかったんですよね。振り返ってみて、そこから大きく変わらずにやってきて、「やってこれたな」っていう。

楽 今の暮らしに自信がついてきたってことですか。

新 やってこれたから自信はついたかなあ。

楽 その言葉が聞けてよかったです。

自分のやりたいことと、社会との折り合い

最後に、あらやんさんに今後やりたいことについて話を聞くことにした。華々しいキャリアを捨て、旅をしたり新しい経験をして刺激を受けた後に、人は何がしたくなるのか、気になったから。

 あらやんさんの今後の人生について伺いたいんですが、基本は今の延長線上でやっていく感じなんですか。

新 ここに来て、ちょっと何かやったほうがいいんじゃないかなっていう気持ちにはなってきました。よく言われてきたことだと思うんですけど、やっぱり社会に貢献できている感じというか。誰にも迷惑かけてないと思うし、結構ボランティア活動とかもやってるんで、そういう意味では貢献してるんですけど。

 すごくよくわかります。私も仕事を辞めたのにわざわざお金にならないマガジンを発行するぐらいなので。あらやんさんのその欲求は、いわゆる自己実現の欲求なんですかね?

新 この段階ではうまく言えないな。やっぱり、みんなとそこそこ足並みをそろえてないと生きづらいよっていうことを、割と前向きに捉えてるみたいなことですかね。

 今までは、世間と足並みがそろってなかったですか?

新 さっき楽園さんが、会社で働き盛りに辞めちゃうなんてなかなか一般的には受け入れがたいよねって言ってたじゃないですか。そうだとすると、やっぱりちょっとそこと温度感を合わせたほうが話もしやすいし、生きやすいんじゃないかっていうことに帰ってきてる感じですかね。

 これまで、会社員時代は別にして、そこから先は自分のやりたいこと100パーセントでやってきたんですよね。で、ちょっとまた違う自分が社会に戻るっていうか、自分自身の満足感と社会との折り合いを両方大事にしながらやっていくイメージですか。

新 そうですね。もう少し一般的に「仕事」って言ったときにイメージできるようなことの割合もちょっと増やしていきたいなって思ってます。でも100パーセント会社員とかっていうのは想像できなくて。

楽 コーチングとかは仕事ですよね。

新 コーチングの割合も、もうちょっと増やしたいと思ってるし、まだ探してる最中です。

楽 まだ見つかってないんですね、その何かは。イメージとしては社会と足並みがそろうような何か。

新 分かりやすい職業みたいな感じですかね。例えば......大家さんとか。不動産投資のオーナーですって言ったら、通りはよくないですか。

 どうだろ。ビットコインよりはいいかもしれない(笑)。私は不動産投資してて大家さんでもあるんですけど、本質的には不労所得という意味でビットコインと何も変わらないですよね。でも、ここは自分の場所で、貸して生計立ててるっていうのは食い扶持としてはイメージしやすいかも。入居者が退去したら清掃業者呼んだりとか、入居が決まらなければ地元の不動産屋に菓子折り持って行ったりとか、ビットコインよりは具体的労働も多少あります(笑)。

新 ただ投資して運用してるっていうよりは、お掃除もしてるよとか、修繕の手配とかもしてるよ大家さんみたいな......こんな話でいいのかな(笑)。

楽 ちょっとタイムリーな話で、私は今回東京に戻るにあたって家のローンを組んだんですけど、働いてないからかなり社会的な信用力が落ちていて、ローンを複数社に断られました。でも一社だけ貸してくれたんですが、そこは私に不動産所得があることを評価してくれて、ぎりぎり通ったんですよ。ビットコインの収入だったらローン下りなかったんじゃないかなと思って。こういうのはまさに社会との折り合いですよね。大家さん稼業はそう言う意味でビットコインよりはいいかもですよ。

あらやんさんの今後の目標は「犬マンション」!?

新 最近、自分の中に犬ブームが来ていて、保護犬に毎週会いに行ってるんです。犬飼うときって、自分が留守にしたら犬が寂しがるとか、自分が風邪ひいちゃったら散歩に行けなくて犬が困るとかが課題なんですよね。誰かと一緒にシェアハウスみたいな場所でみんなで犬飼うみたいなのもいいなと思ったんですけど、それをやるんだったら自分がそういう物件のオーナーになるのもいいかなと。

楽 犬カフェのマンション版ですか。

新 犬マンション。

楽 それ、すごいですね。みんなから共益費を集めて保護犬を育てていくみたいなことですよね。流行るんじゃないですか。早く商標登録したほうがいい(笑)。

新 これだけずっと保護犬がなくならないのって、やっぱり一度飼ったんだけど無理で手放しちゃうわけじゃないですか。みんなで飼ってれば、1人が忙しくなって散歩行けなくても他の人がカバーできたり共益費でカバーできるし。そんなことを妄想してますけど、まだ実現までには至ってません。

楽 面白いですね。あんまり聞いたことないし、そういう事例ってないですよね。犬を飼うのがOKなマンションはいっぱいあるけど、みんなで犬を飼おうっていうマンション。

新 今、マンションで飼えるのって小型犬ばかりじゃないですか。ゴールデンレトリバーとかも飼えたらいいな。

楽 しかも、そこに住むのは心の優しい人が多そう。

新 絶対そうですよ。

 私は30歳ぐらいのときにペットOKのマンション住んでたんです。でも実は私は猫アレルギーだし、そんなにペットに興味がなかったんですが、たまたま選んだマンションがそうだったんです。そこで分かったのは、ペット飼ってる人のほうが総じて優しいっていうことでした。心の余裕があるからでしょうか。自分は飼わなかったけどペットを飼ってる方への見方はすごく良いほうに変わりましたよ。僕は今後も旅をしたいからペットは飼わないけど。

新 僕も幼少期にペットを飼っていた経験もなかったし、最近になって触れ合うようになったんで、徐々に慣れてきました。そういう妄想をしてますが、いきなりシェアハウスオーナーになる財力もないし、お金への興味も薄れていたところだったので、改めてお金をたくさん稼ぐことで、将来そういうことができるかもしれないなと。

 確かに何かお金を使う夢を持つと、働く意欲もわきますよね。夢のペットマンションを恵比寿につくりましょうよ。話が飛躍しちゃいますけど、今、少子化ですが、子どもが産めないとか、いろんな理由で産まなかったりするじゃないですか。マンション内で子育ても共有するぐらいのほうが、みんなが居心地よくなるんじゃないかなって思ったりもします。

新 コレクティブハウスっていう概念が北欧とかにあって、それを思い出しました。シェアハウスなんだけど、子連れの夫婦もいるしお年寄りもいるし大学生もいるし、いろんな世代の人たちが一緒に住むことでいろいろカバーし合えるっていうのはいいですよね。

楽 ある意味では「村」の復権かもしれないですよね。田舎の集落がマンションに収まるというか。すぐに実現しないけど、そこに向かって進んでいきたいっていうイメージなんでしょうか。就職したり立場を変えるんじゃなくて、今の立場のままで設定するゴール。

新 ビジョンみたいなのが見えた上で、選択肢として会社員がよさそうだったらするかもしれないし、そんなにやり方はこだわってないんです。無理なくストレスなく働ければ。

独立してうまくいく人、ダメになる人の違い

 それにしても、あらやんさんのようにキャリアを激しく変えてもうまくいく人もいれば、失敗しちゃう人もいるのはなぜなんでしょうね。

新 まあ運がいいんでしょうね。

楽 あらやんさんは、なんで運がいいんでしょうね。

新 大変なこともあったはずなんですけど、運がいいって思えるってことは、自分で言うのもなんだけど謙虚さがあるんじゃないですか。何でも「ありがたいなあ」って思ってるから。

楽 瀬戸内寂聴さんに話を聞いてるみたい(笑)。

新 自分の状況とか経済的な状況とかを誰かに話したときに、「それで心配にならないの?」って言われたことあるんですよ。

楽 私もありますよ。過去はあんなに活躍してたのにって。

新 どんなことでも自分は、ありがたいな、運がいいなくらいに思ってるんで、そういう意味での謙虚さです。

楽 確かに。だから逆に言うと謙虚になれない人はライフシフターには向いてないかも。旅行にしてもそうですよね。結局、謙虚さですよね、海外でうまくやるコツって。旅に行くと、誰も知らないし周りの人と肌の色も違う、1人の弱いマイノリティーになるから、自分って弱い存在なんだ、その国にお邪魔してるんだっていうことを思い知らされるんですよ。そういう気持ちは忘れないようにするのが大事だなと思ってます。

新 まさにそうですね。何もないって思ってても、大きな病気もせずに5年間過ごせたし、家族とか近しい人もみんな元気だしって思うと、十分ありがてえなあ、みたいな。

楽 旅だったら、とりあえずケガしないでよかった、死なないでよかったって思います。

新 ケガしたとしても死ななくてよかったなあ、とか。

楽 飛行機が墜落せずに済んだとか、そういうことにいちいちありがたくなりますよね。ライフシフトは、旅であるってことでどうですか?

新 間違いない。

楽 かっこよく言っちゃいますが、あらやんさんも私も、ある意味人生の旅人。謙虚な旅人です。そういう生き方がちょっといいなと思う人は、ぜひ私か、あらやんさんのコーチングを受けてください(笑)

 (笑)。ありがとうございました。

(おわり)

おわりに

前回の続き(船の燃料を探しに知らない国をうろうろ。トラックをヒッチハイクをして命拾いした船長と助手)
(オフロードを走るトラック。どうやらかなり長時間ドライブしているようだ)
船長「ZZZZ、、、、」
助手「船長、起きてください」
船長「(むにゃむにゃ)ZZZ、、、(XXちゃんかわいい)」
助手「ダメだ、船長って一回寝出すと起きないんだよな」
船長「(あー、一緒に中華食べたかったな)」
助手「何を言ってるんだ。ねえ船長。起きてくださいよ。このトラック、さっきからずっと走ってるけど、これ本当に目的地に向かってるんですかね」
船長「ZZZZZZ」
助手「ダメだ・・・」
助手「Excuse me, How many minutes アンティル we arrive destination?」
ヒッチハイクしたドライバー「Barabara ni mbovu na inabidi tupitie mchepuo. Itachukua dakika,」
助手「ダメだ。何言ってるか全然わからない。(時計を指差し)How Many minutes?」
ドライバー「ターティ・ミナット」
助手「サーティ? 30?」
ドライバー「Yes, Yes, (口笛)」
助手「(なんだかものすごく不安。船長なんで起きないんだよ。船長のバカバカバカ)
(助手君を乗せたトラックは走り続けた)
(つづく)

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