楽園の地図58号 ニューヨーク住みたい街ランキング1位 グリーンポイント
NY Subway (68th Street)
はじめに(書店計画)
今週の楽園 グリーンポイント(ブルックリン/NYC)
今週のオアシス Before Sunset(プサン/韓国)
今週楽園で読みたい本 旅するタイ・イサーン音楽ディスク・ガイド (イサーン/タイ)
今週楽園に行けない人のために Bappa Shota(日本)
おわりに
はじめに
書店計画
ここのところ、訳あって東京で不動産を探しています。わけも何も、書店を開く計画があるからで「楽園の地図ブックス(仮)」は、当メルマガで紹介しているような本、音楽、映画、旅でゲットしたお土産品などを売る予定です。美味しいコーヒーも出す予定です。私がなるべく店頭に立つ予定です。場所は検討中ですが、今のところ新大久保のあたりか、新宿のあたりで探しています。沖縄の古宇利島の民泊も2年経ちまして軌道に乗ってきたこともあり、そろそろ別の事業を始めようかなと考えてる昨今でございます。
書店計画についてはバックナンバー(50号の最後の方)で趣旨を軽く話していますが、楽園の地図の読者さん、ゲストさんたちがイベントを通じて交流する場になればいいなと思っています。たくさんの方に来ていただきたいのでなるべく広い物件があるといいのですが、それほど売り上げが見込めるとも思いませんので、家賃の安いところで探してまして、具体的な話はまだまだ先になるかもしれません。
でも、新しいことを始めるっていいですよね。楽園の地図もはや58号となりましたが、初心のワクワク感を忘れず頑張っていきたいと思います。今週は、永遠の憧れの街、ニューヨークからお届けします。
今週の楽園 グリーンポイント(ブルックリン/NYC/US)
WNYCトランスミッター・パークの夕暮れ
(私的)ニューヨークの住みたい街1位 グリーンポイント
憧れの街、ニューヨークにはいつか住んでみたいですよね。もしもあなたがニューヨークに住むとしたらどこがいいですか? 目立ちたがりでにぎやかなことが好きなあなたはやはりブロードウェイでしょうか。住環境がよくお金持ちが多いエリアが好きならセントラルパークに近いアッパーイースト、カルチャーが好きならイーストヴィレッジあたりでしょうか。でも今言ったところは全てマンハッタン。東京でいえば山手線の中みたいなところで、家賃も高くなかなか住めるところではありません。
若者が多いのは、その対岸であるブルックリンやクイーンズです。特にブルックリンは昔は犯罪も多く荒廃した土地でしたが、世紀が変わる90年代後半ごろから徐々に変わり、今となっては若者に人気のエリアになってます。ブルックリンで一番人気はウィリアムズバーグ、二番手でダンボなんかが有名ですが、これらももはや一般人が住めるような家賃ではありません。そこで私としてのおすすめはグリーンポイントです。グリーンポイントは地下鉄も一路線しかなく多少不便なエリアではありますが、そのせいかニューヨークの喧騒から少し距離を取ることができます。
せっかくなので、まずは中心地からの行き方を教えましょう。グリーンポイントには、船の移動が便利です。
ニューヨーク、ブルックリン側の船の路線図
グリーンポイントはまさに緑色の路線、マンハッタン側だと、East 34th Streetか、Wall Streetから乗車すると、DUMBO、Williamsbueg、Greenpointに全て停車します。全て公共の交通機関なので乗船料は安いです。なお、ニューヨークの中心、マンハッタン島でも、特に高層ビルが多く、いわゆる都心は、ウォール・ストリートやワールドトレードセンターのあるダウンタウンか、エンパイアステートビルやタイムズスクエアのあるミッドタウンなのですが、この2つの都心はそれぞれEast 34thと、Wall Streetの船着場に対応してますので、この船に乗れば効率的にニューヨークの市内観光もできます。
ちなみに、左下の灰色の船(スタテン島行き)に乗ると、船の上から自由の女神が拝めます。自由の女神がある島に上陸できる観光船もありますが、高い上に、登ったとて女神以外に何もないのであまり楽しいことはありません。なのでスタテン島行きの船は自由の女神見物路線としておすすめです。
さて、実際に船に乗ってみましょう。
マンハッタン島のスカイスクレイパーを眺めながら移動できる。忙しないニューヨークで、ここだけのんびりとした時間が流れる。
こうして船に乗って到着できるのがグリーンポイントなのです。到着したらちょっと小腹が空いてきました。おすすめのパン屋にでも行きましょう。
私が好きなのはBAKERIというお店です。
キッシュやパイ系はケーキみたいに素敵な見た目
私はシンプルにバケットにハムが挟んだやつを買うことが多いのですが、とにかくここで腹ごしらえしましょう。
グリーンポイントで最も楽しいのは買い物です。しかも、掘り出し物の。私が好きなMONKというお店はコロナの最中に閉店しちゃったんですが、大好きなお店なのでぜひ紹介させて欲しいのですが、古着、ビンテージな洋服を買うのにぴったりです。
所狭しとユーズド品が並ぶ店内。
ついでにこれは皆さんにおすすめということでもなく私的な趣味ですが、レコードも素晴らしい店があります。Record Grouchというお店なのですが。
Rebecca Grouch。60'sや70'sのブラックミュージックが多い気がする。
こうして掘り出し品をゲットするのがグリーンポイントの真の楽しみだと思います。またこの地はベトナム料理や韓国料理など、アジア系エスニック料理店が多いような気もします。そこもここが住みたい街だと思わせるポイントです。
食材屋も多く、ニューヨーク長期滞在時には懐かしくなる日本の調味料も多数買えます。
こうして、レコード、食材、洋服などを漁っては、疲れたらカフェでのんびり。ニューヨークの中では少しだけ家賃が安いこの辺りでは、倉庫などを活用した広々としたカフェがいくつかあり、休憩にぴったりです。東京でいえば蔵前や清澄白河みたいな場所と言えるかもしれません。
例えばSweetleaf Coffee。
倉庫を活用したロースター兼カフェ。
浅煎りのコーヒーをカウンターでやっつける。
そうこうしているともう日暮れの時間。グリーンポイントの素晴らしいところは、西側が川になっているので(イーストリバー)、マンハッタン島に落ちていく夕日を見れるところです。太陽が落ちる前に(Before Sunset)公園に行きましょう。
もう先客がたくさんいました。
この日は天気も良くなくあまりいい夕日は見れませんでしたが、とにかく家賃が高くパーソナルスペースを確保しづらいニューヨークにおいて、まるで自分の庭のようにくつろげる公共の公園があって、そこで近所の人がシートを引いてのんびりくつろいでいるのを見ると、ああ、ニューヨークに住むならここがいいなーと思いました。
帰りは先ほどの船に乗ると、マンハッタンの夜景を余すことなく楽しめます。
夜のクルーズも最高に綺麗。公共料金価格でこの夜景を味わえるなんて! 写真はマンハッタン橋。
いつか、グリーンポイントに住んで、船でミッドタウンに通勤するような、そんな暮らしがしてみたいです、皆さんも一緒にどうです?
今週のオアシス Before Sunset(プサン/韓国)
韓国のプサンは私が大好きな街の一つです。特に好きなのは西面というエリアにある通称カフェストリートで、さまざまなカフェがあります。めちゃくちゃ大きなケーキが売ってるMOLLE(韓国のケーキが大きいのはデートで二人でシェアするかららしいっす。私は1人で平らげました)や、まるで家みたいな雰囲気が落ち着くAWLUKなどいい店はたくさんありますが、一番お気に入りの店はBefore Sunsetです。
Before Sunset。プサン中のイケてるシティボーイが集まる!とか。
ここのメニューは少し変わっていて、コーヒーと一緒に「とんかつ」が頼めたりとか(しかし今Google Mapなどで情報を確認してるとトンカツの写真は一枚もない。なんか夢でも見てた?)、色々ありますが、いくつかのフロアに分かれていて、日光に強く当たれる部屋、植物の多い部屋なんかがあり、テーブルも大テーブルから小テーブルまでさまざまで、自分なりのお気に入りの座席を見つけることができるはずです。待ち合わせなんかにちょうどいいお店かもしれません。
たくさんあるプサンのカフェの中でこの店が何よりも大好きな理由は、映画のタイトルがつけられた店内だからです。Before Sunsetという店名にピンと来るひとがいたら、このカフェで一緒に待ち合わせましょう。私は幻のトンカツを食べてるかもしれませんが。。
プロジェクターでは、カフェにちなんだある映画が韓国語字幕付きで流れてる
プサンは本当に恋人と出会いの街だと思います。独り身の人は、私を信じてプサンに行ってみてください。きっと、Before Sunsetみたいな経験ができるはず。
今週楽園で読みたい本 旅するタイ・イサーン音楽ディスク・ガイド TRIP TO ISAN
18世紀ラオスに生まれた、150年早く生まれたラップミュージック、モーラム、あるいは1950年代タイに生まれた、50年早かったドローンミュージックについて
今日はタイの音楽、モーラムとルクトゥーンについて紹介した良書を紹介したいと思います。
タイにはイサーンという土地があって、これは「東北」を意味します。文字通りバンコクから見て東北のエリアをイサーンと呼びます。バンコクから東北方面に向かって、コラート(ナコーンラチャシマター)から奥のエリアをイサーンと呼びます。この土地が他のタイの違う特別なところは、もともとラオス人が暮らす土地だった場所を、戦争の末手に入れた、タイからすると新しい領土で、自分たちと違う種族が暮らすエリアだった訳です。中国人にとってウイグルや内モンゴル、日本にとって沖縄のような場所だった訳ですね。タイ人は自分たちと違うルーツを持ったイサーンの人々を差別しました。要するに、田舎者だと思われていたわけです。現代でも主流派のタイ人の間では、イサーン人をバカにする風潮があるそうです。
イサーンの土地は面白く、このようにタイとラオスの中間のような土地でありながら、南部はクメール、つまりカンボジアの人々も多く暮らしていました。いわば、人種のサラダボウルのような場所だった訳ですね。そんないくつかの文化が混じり合う土地であるイサーンには、特別クールな音楽がありました。そう、それがモーラムとルークトゥンだったのです。
モーラムやルクトゥーンのルーツは、ラムウォンという音楽が生まれたのがきっかけなのですが、その後さまざまなジャンルの音楽が生まれては消え、最終的に今もポピュラーな存在として残っているのがルークトゥンとモーラムです(この辺りの歴史の変遷は本を読むとわかりやすく図解されています。)
これらの音楽は、発祥の地、イサーンで歌われていましたが、今となってはタイ中に散らばっているイサーン人のDNAと共に、タイ全土で主に労働者の曲として親しまれています。日本でいえばいわば演歌のような立ち位置に近いでしょうか。実際にモーラムやルークトゥンを演歌として紹介した本もあります。
モーラムはもともと地元の伝承や宗教的な教えを語る語り部のようなもので、これにメロディやリズムをつけて楽曲にしたものが現在聴かれているモーラムになります。つまり、ラップに近い音楽と言えるかもしれません。モーラムは、150年早く誕生したラップミュージックであると書いたら、ちょっと言い過ぎでしょうか。
私を含む今の人は演歌なんか聴かないように、モーラムやルークトゥンもかなり土着的な古臭い音楽だと一聴して思われると思います。
Isan Lam Plearn/Angkanang Kunchai (モーラムやルークトゥンはタイ語のみで表示されることが多いので探すのが難しい)
น้ำตาแม่ค้า(商人の涙)/Waiphot Phetsuphan
ลำเพลินเดินนิทาน/Suphap Daoduangden
さまざまな音楽に触れた今の耳を持って、辛抱強くモーラムやルークトゥンを聴いてると、ある瞬間から不思議なグルーヴ感、トリップ感を味わえます。これはひとえにケーンという楽器のおかげだと思います。Suphap Daouduangdenの上の曲なんかは、割とトリップ感あると思うのでそういうつもりで聴いてみてください。
リズムのループ感もありますが、ケーンという楽器の影響もあります(Suphap Daouduangdenの曲で冒頭のソロがケーンです。ケーンだけを演奏している映像も以下に置いときます。この音です。この音こそがモーラムやルークトゥンの命です。
この小さな楽器一つからこの複雑な音が大音量で出るのが不思議です。ケーンはタイやラオスの民族楽器なのですが、管楽器なので音階はあるけどピアノのようにはっきりせず、音符と音符の間、五線紙で表せられないニュアンスも多いように思います。複数の竹管を通って音が鳴るのですが、自然と倍音っぽい音がたくさん出ます。これがグルーヴ感の正体だと私は思います。
また、世間ではドローンミュージック(ドローンミュージックの例)などが最新の音楽として物好きの間で流行ってますが、ここでもこのケーンの響きはドローンっぽさを含んでいると私は思います。タイは音楽については200年ぐらい先をいっていたのかもしれません。
倍音で思いつくところはモンゴルの口琴なんかに近いですが、少し気の抜けたような音が鳴りやすい口琴と違い、ケーンは遥かなるインドシナの王朝を感じさせるような、どことなく荘厳な雰囲気もあります。そんな荘厳な音を追ってるとついふわふわと飛翔するような、夢の中に突入するような音楽があります。
このような伝統音楽の演奏だけでなく、もちろん西洋のロックやR&Bを取り入れた楽曲も多いです。私が好きなSroeng Santiの以下の曲は1978年の曲ですが、早すぎるHip Hopと言えるかもしれません。
ไปนะไป(Pai-Na-Pai)/Sroeng Santi
タイ音楽であるとかモーラムだとか演歌だとかいうカテゴリを飛び越えて、普通にカッコよくないですか、この曲? 聴いたことないエキゾチシズムに溢れてます。
この本の著者はドイツでエレクトロニカ、トランスミュージックの洗礼を受けたそうです。そんな著者がタイに来てモーラムやルークトゥンにハマったという経緯は少しわかる気もします。ルークトゥンは人力トランスミュージックと言えなくもありません。
この本が素晴らしいのは、そんな謎めいたルークトゥンやモーラムの曲の数々を、カタログ的に、図鑑的に写真入りで多数紹介していること。実際の音楽家のインタビューを含む製作者の生の声が多数入っていること、それぞれの歌手や音楽家の変遷について詳細に記載されているからです。少なくても日本語で書かれたモーラム・ルークトゥンの本の中では一番詳細に説明された本だと思うし、こんな本は向こう10年、20年は出てこない気がします。つまり、少しでもタイ文化に興味がある方なら、この本は買うしかありません。分厚い本ですが図版がとにかく多いので案外サクサク読み進めることが可能です。
今週楽園に行けない人のために Bappa Shota(日本)
いつもは映画の紹介をしているコーナーですが、今日はちょっと装いを変えて、Youtuberの紹介をしたいと思います。
旅系のYoutubeは今やさまざまなスタイルがありますが、私が思うに日本最高の旅YoutuberといえばBappa Shotaです。頭一つ、いや三つぐらい抜けてます。とにかく動画のクオリティがやばい。目の付け所が面白い。
旅系のYoutuberはいくつか見ましたが、動画のクオリティはいいけどイメージ動画っぽくてその場所の空気感が全く伝わらなかったり、本人のコメントが面白くなかったり、逆に本人の喋りはうまいけど観たい映像が撮れてなかったり。色々ありますが、この人は全てのクオリティが高いです。まるでテレビ番組でもみているように、いやそれ以上にクオリティと臨場感あふれる映像が見れます。私は最近ご飯を食べながら彼のYoutubeを見てます。単に観光ガイドにとどまらず、社会に切り込んでいるのが面白いです。例えば上の動画は、マレーシアのジョホールバルにあるフォレストシティという場所からレポートしてます。東京オリンピックの晴海フラッグの10倍の予算をかけた中国資本の大規模マンション群が、コロナやさまざまな事情によって住民が住む場所にならなかった様子を伝えています。
彼がレポーターとして信用できるのは、ゴーストタウンっぷりを無理に強調することもなく、人のいるところはちゃんといると紹介するところで、ありのままを伝えている感じがするからです。単に変わった場所を笑い物にしようとすることもなく、どうやったら再生できるのか、再生の道筋まで紹介しているのも信用できるところです。
これはアメリカで最も肥満の割合が高いアメリカ・テキサス州のマッカレンの様子を伝えています。彼がこの街の食事を実際に食べながら、なぜこの街がアメリカで最も肥満率が高いのか、現地の人のインタビューを効果的に加えながら紹介しています。もちろん、こういったことはインターネットで調べればある程度理由や事情はわかるでしょう。でも、現場に行くからこそたどり着ける感情の変化もあります。それは検索では本来手に入らないものです。それを自宅にいながらにして追体験できるなんて、なんて楽しい時代になったのでしょう。
こちらは馬で広大なモンゴルを横断する動画です。これを見るとわかるのですが、彼はYoutuberとして優れているだけでなく、単にツーリストとして、大自然でサバイブしていく能力が高いのでしょう。慣れない馬に乗りつつも動画の撮影も難なくこなし、野営の地で予期せぬ大雨が降ってキャンプが風雨で崩れても、彼は自然に脅威を感じつつも、レポートを続けることをやめません。私も行動力は彼に負けませんが、レポーター魂を持って今後も世界中のさまざまな場所をレポートしたいと思います。
おわりに
助手「ねえ船長、横顔の船長ってそんな顔なんですね」
船長「なんだよ急に」
助手「横顔があるってことは、縦顔もあるんですかね?」
船長「縦顔!? ないだろそんな顔」
助手「頭頂部から見下ろした顔が縦顔じゃないですか。横に対する縦だから」
船長「ほぼ頭しか見えないだろ、それじゃ」
助手「そもそもなんで横なんですかね」
船長「横に座った時に見える顔だからじゃね?」
助手「じゃあ縦に座ってみましょう」
船長「縦ってことは一列ってことか?」
助手「縦列駐車は一列に並べることだから、縦って一列ですよね」
船長「何が見える?」
助手「(振り向いて)真正面から船長が見えます。これが縦顔か」
船長「そもそもふりむいたらダメなんじゃないか?」
助手「いや、横顔だって厳密に言えば、横に並んだ後で振り向かないと見えませんよ」
船長「たしかに。じゃあ振り向くのはオーケーだ。じゃあ縦顔って、正面から見た顔のことなんだね」
助手「今日は縦顔がわかりましたね」
船長「なあ助手くん」
助手「どうしました?」
船長「俺たち、つくづく暇だよな」
助手「暇ですね。じゃあ次は、よこしまな気持ちに対するたてしまな気持ちを考えましょう」
船長「やれやれ」
「縦顔」 inspired by Propose/Sheena&The Rockets, lyrics by Shigesato Itoi
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