楽園の地図52号 ソウルで一番居心地のいい街、ホンデに行こう

ホンデ(ソウル)/ダバオ(フィリピン)/東京
船長と助手 2024.08.23
誰でも
COMMON GROUND, Seoul, Korea

COMMON GROUND, Seoul, Korea

もくじ

はじめに (ロシアの野望、イスラムの野望、中国の野望)
今週の楽園 ソウル・ホンデの1日(ホンデ/ソウル/韓国)
今週のオアシス 夜カフェ B-hind(ホンデ/ソウル/韓国)

今週楽園で聴きたい音楽 フィリピンで流行中の謎の音楽ジャンル、Budotsについて(ダバオ/フィリピン)
今週楽園に行けなかった人のために 映画 太陽を盗んだ男 (東京/日本)
おわりに()

はじめに

ロシアの野望、中国の野望、イスラムの野望

領収書を整理しなきゃいけないのですがずっとできてません。昔は割とちゃんとそういうことをできるタイプだったのですが、自由業に戻ってからすっかりそういう「楽しくはないけどやらなきゃいけないこと」をやるのが苦手になってしまいました。来週、はじめにを書く頃には終わってるといいな、いいですね。

昨今の世界の動向を知る中でやっぱり一番大きい話題は戦争ではないでしょうか。つまり、ロシアとウクライナ、イスラエルとパレスチナです。そして将来的には中国が台湾を侵攻するんじゃないかと言われています。戦争のない世の中がくればどんなにいいのかなと思うのですが、これからも世界に不平と不平等と腐敗が蔓延する限り、壊したいと思う人が出てきても不思議ではありません。

社会の時間で習いましたが軽く歴史をおさらいしましょう。、第二次世界大戦後に、今の日本と世界のシステムが出来上がって、日本という国は特に変化もなく、アメリカの傘の下で平和にやってこれました。戦後は主にアメリカを中心とする西側陣営と、ソ連を中心とする東側陣営が二大勢力となって、世界に均衡をもたらしてきました。これは冷戦と呼ばれましたって話は、1989年にベルリンの壁が崩壊し東欧各国で革命が起きて、1991年にソ連が崩壊してロシア他15の国に分かれて、終焉からすでに33年の時間が流れていますので、もはや最初に説明しないと、当時のソ連がどれだけ大国だったのかわからない方も多いかもしれません。

以下、当時のソ連、そしてソ連の同盟国とされる国を色分けしてみました。赤色がソ連を構成する国家、そして、赤に紫色の部分が東側諸国の中心となるワルシャワ条約の加盟国家、そしてさらにピンクの国家が、当時「東側」「ソ連寄り」とされた国家です。こうしてみると、当時のソ連はマジで強くて、世界は二分されていたんだなと思います。

ソ連を中心とした東側諸国

ソ連を中心とした東側諸国

プーチンの頭の中にはこの頃のソ連の栄光があるのかもしれません。しかし、現在のロシアの友好国、軍事同盟を結ぶ国家は少なくなっていて、以下の通りです。(参考:wikipedia英語版:List of military alliancesより、activeを抜き出した表)

現在、ロシアと軍事同盟を結ぶ国家

現在、ロシアと軍事同盟を結ぶ国家

赤はロシア本体、紫色は、そのロシアとかつてソ連だった国でアライアンスを結んだCSTO加盟国、そしてピンクがその他のアクティブな軍事同盟を結ぶ国です。見づらいですが、水色が1カ国だけあって(アルメニア)、この国は最近CSTOを脱退すると宣言して話題になっています。北朝鮮やイランが今回のウクライナ戦争でロシアに武器を供与したことが報じられていますが、逆に言えば非常に仲間は少なくなってしまったと言わざるを得ません。かつてソ連だった国ですら、バルト三国はロシアにとって敵方のNATOに加盟してしまいましたし、もともと親露勢力も根強かったウクライナもあの通りですし、盟友ベラルーシと中央アジアの国、中東の一部を除くとロシアの味方は非常に少ないです。中国とロシアは蜜月だと報じられていますが、今のところ正式なアライアンスを組んではいません。もしも組むことがあったとしても、中国が優位となるアライアンスになるんじゃないでしょうか。

はっきり言えば、今回のウクライナ侵攻は沈む国ロシアの最後の抵抗と言えるかもしれません。一部ではロシアが再びアメリカに勝負を挑んでる、覇権国家に戻ろうとしてるのではないかと報じられていますが、プーチンの頭の中はさておき、残念ながら世界的な影響力は下がってると言えるのではないでしょうか。

ちなみに、以下はアメリカが軍事同盟を結ぶ国家の一覧です。(同じく、wikipedia英語版:List of military alliancesより、activeを抜き出した表)。

アメリカが軍事同盟を結ぶ国たち

アメリカが軍事同盟を結ぶ国たち

こうしてみると、アメリカという国は世界中に味方がいることが示されています。南米各国の間でRio Pactという軍事同盟を、そして欧州とカナダとの間でNATOという同盟を結び、この2つの同盟関係を軸に日本、フィリピン、オーストラリア、インド、タイ、エジプト、モロッコなど様々な場所に同盟国があることがわかります。このようにみると、アメリカの傘の下で平和を謳歌してきたのは日本だけではなく、多くの国がそうだということがわかるでしょう。なお、水色の国家としてサウジアラビアとは新たな軍事同盟の締結に向けて調整中、ベネズエラやウルグアイはRio Pactに加盟したり脱退したりしてるので、水色で表現させていただきました。ジョージアとボスニアはNATO加盟申請中という扱いなので、これまた別の色で塗り分けました。

続きましてイスラエルとパレスチナの関係ですが、これも今更って感じですが、一応イスラム圏の状況とイスラエルという国家の場所をおさらいしておきましょう。

イスラム教住民が多数派を占める国家一覧

イスラム教住民が多数派を占める国家一覧

中東や北アフリカを中心にイスラム教を支持する人々の国が固まっています。中東に薄くピンク色で塗った国(すごく小さいですが見えますか?)があるのですが、そこがイスラエルです。こうしてみると、イスラム国家に見事に囲まれていることがわかります。

イスラエル人はユダヤ教を信仰していて、この地にはユダヤ人が住んでいます。ユダヤ人はかつて欧州で少数派で、各地で迫害されながら生きてました(最も有名なのが第二次世界大戦下のドイツ、ヒトラーによるユダヤ人惨殺ですね)。こうしてヨーロッパにいられなくなったユダヤ人たちは世界中に散らばります。そんな彼らが自分たちの国家を作るべく、もともとイスラム系住人が住んでいたイスラエルの土地を奪って建国したのがイスラエルだったわけです。こうして、イスラエルとイスラム系国家の睨み合いは現在に至るまで抜本的には解決していません。さて、世界中に散らばったユダヤ系の人々の一部がたどり着いたのがアメリカです。彼らは医者や映画産業やIT産業といった要職に多く就きました。アメリカの産業界で実権を握る人々の中には、ユダヤ系の人は多いです。ですから、歴代のアメリカ政府はイスラエルと協調する政策を採ってきました。こうして、アメリカとイスラエルは無二の関係になりました。一方、欧州からしてもかつて迫害した人々が中東に逃げて作った国家なわけですから、イスラエルに同情的な目線がないわけではありません。バックにアメリカがついて、技術大国であるイスラエルと、中東において圧倒的多数派なのに虐げられるイスラム系住民というねじれが、今日に至るまであの地に血が流れ続ける根本的な要因となっています。もちろん、緑色の国家はたまたまイスラム系の住民が多数派を占めるという共通点があるだけで一枚岩ではありません。その証拠にサウジアラビアとイランは仲が悪いですし、同じイスラム教でも中東とマレーシアでは厳格さもかなり違います。ただ、いつかこれらの国が束になったときに、キリスト教の国家の覇権が崩れることを恐れているのが、欧米の国々の人々です。

最後に取り上げたいのが中国です。ロシアと並び、世界の覇権国家の立場を狙っていると噂されている国です。日本と中国の間には尖閣諸島を巡る問題もありますし、アメリカにとって中国は潜在的な敵国と位置付けられているので、中国を脅威と見る向きも多いです。以下は中国が軍事同盟を結ぶ国家です。(再びWikipedia英語版より)

中国と軍事同盟を結ぶ国

中国と軍事同盟を結ぶ国

見えないかもしれませんが、中国と正式に軍事同盟を結ぶ国が3つあります。北朝鮮と、ソロモン諸島(太平洋上の小国)、モルディブ(インド洋上の小国)。こうしてみると、中国には少なくても現状では軍事的な同盟関係はほとんどありません。なお、上海協力機構という国家連合があって、それにはロシアや中央アジアの国々、インド、パキスタン、イランなどが含まれています。これらはあくまで対テロのための連合と位置付けられていて、今のところ軍事同盟ではありませんが、西側の報道によるとやがて軍事同盟化するのではないかと疑われています。ただ、正直な話、中国とロシアとインドが一つの考えで強くまとまるとは私には到底思えません。また、これらの国々に加えてヨーロッパのドイツやフランスなども加えた経済的な結びつきを強調した一帯一路という有名な構想がありますが、これもあくまで経済的な結びつきの強化な訳で、これで覇権をとってやろうという魂胆はないと思います。

しかし、この経済的な結びつきを重視する昨今の中国の外交方法で侮れません。このほどインドに抜かれたものの世界一二を争う人口大国であり、アメリカと並ぶIT大国でもある中国は、国家、特に経済力に乏しいグローバルサウスと呼ばれる国家にとっては、ビジネス上どうしても取引したい相手です。その、大口の取引先であるという立場を利用して外交上有利な交渉を続ける中国という国です。しかも、欧州や日本の国家と違い、民主主義ではありません。全く違う思想を持った国が力を持ち出していることに民主主義の先進国は警戒感を覚えているわけです。一方、積年の敵対関係だったイランとサウジアラビアが中国の仲介によって国交が回復したというニュースが去年報じられましたが、このように国際的な調整役を買うこともあり、中国を信頼する国家も特に途上国には多いことが裏付けられました。

さてどうして中国は特に途上国で強い立場を発揮するようになったのでしょうか。もちろん、先ほど説明した通り経済的なメリットを外交にうまく使っていることもあるかと思いますが、それだけではありません。中国は、取引先の国のイデオロギーを気にしません。相手国が独裁国であろうが民主国家であろうが、中国は何一つ嫌な顔をしません。一方で、アメリカや欧州などの国家は、取引先に民主化、グローバル化、法令の遵守などのルールを適用したがります。確かに取引する相手にはクリーンであって欲しいものです。民主化は世界平和への最も重要なファクター(であると考える)だし、経済の自由化(つまりグローバル化)は更なる経済成長への重要なファクターだと考えています。つまり、いいルールがあるから仲良くしたいならこれを採用しろとアメリカやその他先進国は迫ってくるわけですね。一方、中国は他国のルールに干渉しません。相手が誰であろうと(北朝鮮のような独裁国家であってもロシアのような侵略戦争を起こす国であっても)、メリットがあれば平気で取引をします。無責任ととられるかもしれませんが、他国に干渉しない態度が途上国から慕われてるという一面もあると思います。実はこれこそが中国のしたたかな外交手段で、先進国が見落としているところではないかとも私は思っています。社会主義を表面上は標榜する中国が、世界の大国の中で最もビジネスマン的な対応をしていることは皮肉と言えなくはありません。

長くなってすみません。国際的な情勢を知ることは旅人の必須科目ですから、ちょっと長くなってしまいました。さて今週は、韓国・ソウルからお届けします。以前、休載中の「50+1/2号」で写真だけ公開したソウルですが、過去の写真を眺めていたらついついソウルにまた行きたくなってしまったので、今日はソウルの魅力をお届けします。

今週の楽園 ソウル・ホンデのある1日

ソウルのサブカルエリア、ホンデの1日ツアー

韓国という国、ソウルという都市をこの「楽園」のコーナーで取り上げるのは初めてです。確かにどうもソウルという都市は楽園という言葉があまり似合いません。なぜかって考えたんですけど、ソウルは東京と似過ぎてるからなんじゃないかなと思いました。アジアでもバンコクや香港、あるいは台北であっても、楽園という表現が似合います。これらの都市は日本からみるとまだエキゾチックな要素があったり、物理的に暖かかったり、とにかくそういったことがあるからだと思われます。

ソウルはよくも悪くも東京と似ています。街の中心部が鉄道網で張り巡らされてることも、街が起伏に溢れていることも。でも、だからこそ自分のままでいられる場所です。少し雰囲気は違いますが、地方都市に出張するのってちょっと楽しいでじゃないですか。この都市に住んでいたら、自分はどんな暮らしをしてるのかなって想像する時間はなかなか楽しいです。

ソウルの地下鉄路線図。この張り巡らされ方は東京に似ている

ソウルの地下鉄路線図。この張り巡らされ方は東京に似ている

さて、もしあなたがソウルに住むならどこに住みたいですか? やはり高級住宅地が多く、オシャレなお店が多いカンナム(江南)ですか? アパレルや美容など買い物が好きなあなたは、ミョンドン(明洞)や、深夜まで服が買えるトンデムン(東大門)もいいですね。ドラマの影響か夜遊びのイメージがあるイテウォン(梨泰院)に住むのもいいかもしれません。

私はソウルに住むならホンデ(弘大)に住むって決めてます。ホンデ(弘大)はソウルの中心部の西側にあって、中心部からほど近いのですが、中心に弘益大学という大学があって、総合大学ではありますが、特に美術大学(学科に相当)が有名で、日本で言えば日大(芸術学部が有名)に相当する大学だと思います。結果的にこの街には古くからライブハウスカルチャーや、クラブカルチャー、サブカルチャーが育ちました。市街地は、北はホンデイック(弘大入口駅)から、南はサンジュ(上水駅)まで、かなり広範囲に広がっています。東京で言えば吉祥寺ぐらいの規模の街があるんじゃないでしょうか。

ではここで、ホンデに暮らしたとして、1日のモデルコースを一緒に体験していきましょう!

まずは地下鉄弘大入口駅で待ち合わせて、大学方面と思いきや、いきなり裏手に向かいます。一緒に朝ごはんを食べましょう。ソウルは本当にカフェが多いので選択肢が多く困ってしまうのですが、今日の気分はpicniq Hongdae(ピクニック・ホンデ)です。

picniq Hongdaeの2階席。外の公園を見下ろせるナイス立地

picniq Hongdaeの2階席。外の公園を見下ろせるナイス立地

ここはパンケーキやエッグタルトなど甘めの食事が美味しいのですが、私の日課はブラックのコーヒーだけを頼んで、ぼーっと隣に広がる公園を眺めることです。大都会ソウルの喧騒の中にあって、ここはいつものんびりとした時間が流れています。あ、私は昨日サムギョプサルを食べすぎちゃったんで朝ごはんは食べませんが、甘いものがお好きな方はぜひ1階のショーケースに並ぶエッグタルトを試してみてください。なぜかソウルはエッグタルトがたくさんあります。

隣の公園・緑道には線路が

隣の公園・緑道には線路が

実は、弘大入口から東西に伸びる緑道は、かつて京義線という電車が走っていて、廃線になった跡地を緑地、公園として整備したようです。この緑道沿いには気持ちのいいオープンテラスのカフェが多いので、ここで遅めの朝食、あるいは起き抜けのコーヒーをいただくのが私のソウル滞在時の朝です。

では、早速街歩きにいきましょう。

ぶらぶら歩いてまずは書店にやってきました。

THANKS BOOKS

THANKS BOOKS

私が好きなのはTHANKS BOOKSという本屋さんです。なぜかホンデに来るたびによってしまうのですが、話題の本、若者の間で流行ってる価値観などが知れる場所です。英語や中国語(漢字)、まれに日本語の本も取り扱っているので、ソウルの今を知るには結構ぴったりな場所です。

古い家の壁に描かれた絵

古い家の壁に描かれた絵

韓国の特徴は街中にアートがたくさんあることです。何気ない路地にも作品があり、こんなところにこんな壁画が! などと歩いている様々なグラフィティに出会えます。

せっかくなので、韓国コスメを見物にいきましょう。ホンデで簡単に入れるドラッグストアと言えば、The Saemです。え? 男は関係ないって? 韓国では男性でメイクする人も増えているみたいですよ。そうだ。せっかくですので、仮装気分で同行者の女性に教えてもらって今日はメイクしてみましょうよ。男も女も、美しくなるのって案外楽しいっすよ。

The Saemのコスメコーナー。

The Saemのコスメコーナー。

そうこうしてるとかなりお腹が空いてきました。ちょっと早いですが夕飯にしましょう。昼ごはんは弘大タッカルビを食べましょう。ここのチーズタッカルビ、美味いんですよ。

とにかくチーズの量が半端ないタッカルビ。

とにかくチーズの量が半端ないタッカルビ。

韓国料理は基本的にどの料理にもキムチが入っていて、全体的に赤く辛いのですが、キムチは酸味があります。その酸味のあるキムチに対してチーズがかなり合いまして、最近はどの料理を頼んでもチーズトッピングが付いてます。たっぷりチーズを絡めていただきましょう。

もはやすっかり日も落ちて、お腹もいっぱいだしどうしようってことでやってきたのはクラブです。でも、若い人が行くクラブはちょっと苦手って? まあわかりますよ。そこで、こういう場所はどうでしょう。コプチャンチョンゴルという場所です。

日本でいうところの昭和風なインテリアが並ぶ、バー。でもセンターにはちゃんとDJ卓があります。

日本でいうところの昭和風なインテリアが並ぶ、バー。でもセンターにはちゃんとDJ卓があります。

コプチャンチョンゴルとは、ホルモン鍋、日本でいうところのもつ鍋を意味しますが、要は韓国のソウルフードです。そんな不思議な店名のクラブですが、中は昭和モダンといったところ、昔のソウルで流行ったライブも行う喫茶みたいな場所を再現した場所で、音楽も昔の韓国歌謡を今っぽくアレンジした曲が流れてます。これなら、おじさんでもおばさんでも楽しいですし、若者にとっても新鮮ですね。ちょっとひと踊りしていきましょう。

すっかりテンションが上がったあなた、締めは vinyl(ビニール) というバーでいかがでしょう。ここは文字通り、ビニールの容器でお酒を飲む不思議なバーです。

vinylのカクテル。このままストローをつけて飲みます。

vinylのカクテル。このままストローをつけて飲みます。

もうすっかり時間は夜中。え? まだ遊び足りない? じゃあ、最後に軽く夜カフェして帰りますか。次のコーナーで待ってます。

今週のオアシス 夜カフェ B-hind(ホンデ/ソウル/韓国)

B-hind

B-hind

B-hindはソウル・ホンデにある夜遅くまでやってるカフェです。お酒を飲まない私にとって、そして夜型の私にとって、夜カフェとは心のオアシスのような場所です。ホンデの雑居ビルの2階にありますが、喧騒のホンデのなかで急にここだけ静けさがあります。いい店って、いつも自分の後ろにひっそりあって、帰っておいでって言ってる気がしませんか? B-hind(おそらく英語のBehindが語源ですよね?)ですから、どこかあなたの後ろや、心の裏側にいて、帰りを待っているような、そんな雰囲気の場所です。夜遅くまでやってるので、ホンデで遊び疲れた時は、ここでリセットをします。

特に気をてらったメニューはありませんが、ここのコーヒーはうまいです。気分でタルトやトーストをいただくこともあります。でも、夜に行くならあまりスイーツも食べすぎないように。太っちゃいますよ。

今週楽園で聴きたい音楽 フィリピンで流行中の謎の音楽ジャンル。Budotsについて(ダバオ/フィリピン)

音楽好きの皆さんなら、他の人が知らない音楽ジャンルを知るのは喜びのはず。例えばタイの「モーラム」や「ルークトゥン」は最近専門書が出たりしてるのでひょっとしたら知ってるよって方も多いかもしれません。ではみなさん、フィリピンで聴かれるBudotsって音楽ジャンルはご存知ですか? 私が知ってる音楽ジャンルの中ではEDMが最も近いのですが、とりあえず聴いてみましょう。

DJ Red Coreで、Hala Mahulogです。

Hala Mahulogは、タガログ語で「落ちましょう」みたいな意味です。プールに落としあったりする動画と共に流れてることが多いので、まあそんな意味合いなのでしょう。でも、言葉がわからない私がGoogle翻訳を使って直訳しただけなので何か裏の意味があるのかもしれません。EDMのようにとにかく中毒性を売りにした音楽ですよね。ただ、全体を通して割と大きなストーリーを展開するEDMと比べ、しつこい繰り返しが多く、これはいわばミニマルとか、そういうジャンルの亜種とも言えるかもしれません。

どうやらダンスと込みで見てもらった方がBudotsの雰囲気がわかるかもしれません。これは地元の若者たちがさっきの曲で踊ってみたのでしょうが、なんか微笑ましいですよね。どうもしつこい繰り返しを使って、体をくねらせて踊るのが、Budotsの決まりのようです。ユーロダンスとか、懐かしのパラパラ的な要素もありませんか? なんか不思議な音楽ですよね。

さっきの動画もそうですが、背景が農村というか、なんか田舎っぽい雰囲気なのが気になりませんか? ちなみにこの動画にはDavaoと書いてますが、ダバオはフィリピン第3の都市です。まあ、日本で言えば名古屋みたいな、ちょっとマニラっ子からすると田舎でございますわねってところではあります。

実はこのBudots、フィリピンでも、首都のあるマニラ、ルソン島よりも、かなり離れたダバオ周辺で生まれてビサヤ語という、タガログ語とは別の言葉を話す地域で流行ってる音楽です。Budotsは、そのビサヤ語で怠け者を意味する言葉なのですが、一方で、Tabudotsと書くとビサヤ語で「予測できない動きで踊る人」となりまして、踊ってる人の雰囲気からもこれらが語源になってそうです(とにかく日本語の参考資料がほとんどない音楽ジャンルの解説なので予測で書くしかありません)。

さて、そんなBudotsですが、どこかEDMやミニマルハウス、ユーロビートなどと同様にレゲエとの親和性も感じます。以下はRk KentというDJによるWow Gandaという曲です。なんかこういう曲聴いてるのちょっと頭悪そうで恥ずかしいですが、これ、結構好きな曲です。

WOW GANDA/RK Kent (beats by DJ Jorge Calugdan)

どうでしょう? こうやってMCを入れると、どこかレゲエのようにも聴こえませんか? 最近はこのBudotsも少しずつおしゃれな人にも届いてるみたいで、Boiler Room(イギリスを拠点とするアンダーグラウンドなクラブチャンネル)でもこのジャンルの大家、DJ Loveが出演したりと、少しずつ活動の帯域を広げています。

新たな音楽に飢えてるあなた。部屋でBudotsでヘンテコなダンスを踊ってみるのはいかがでしょう? いつかBudotsがジャマイカのレゲエみたいに、世界中で聴かれる音楽になるかもしれませんよ。

今週楽園に行けなかった人のために 映画 太陽を盗んだ男 (東京/日本)

昭和時代の日本映画の勢いをコンパイルした名作!

久々に日本の映画を取り上げましょう。映画について言えば、令和時代の日本の作品よりも、断然昭和の方が好きです。やっぱり勢いが違うというか、かなりチャレンジングな企画を予算をかけて作ってる感じがして好きなんですよ。ドラマでも、「太陽にほえろ!」とか「探偵物語」とか「傷だらけの天使」とか、派手なカーチェイスのシーンなどが多くて、ああ、当時の制作は予算があったんだろうなと思うことしきりです。そうやって昭和の邦画は割と面白かったと話すと、「じゃあどの作品を見たらいいの?」と聞かれることも多いのですが、今見ても面白いという基準で言えば「太陽を盗んだ男」じゃないでしょうか。私が生まれる前、1979年(昭和54年)、東宝制作の娯楽大作です。70年台後半〜80年代前半あたりの日本映画っていいんですよね。「人間の証明」(1977年)、「家族ゲーム」(1983年)なんかも素晴らしいと多います。言われてみれば、現在再評価が進んでる日本のシティポップも70年代後半と80年代前半が最も人気のあるゾーンです。昭和50年代。どうもこの辺りが、日本のカルチャーが最も盛り上がった時期なのかしれません。

年に1、2作、国内のドラマ作品でもすごく話題になるものも多いのですが、なんか暗い話が多くてあまり見れてません。ここだけの話、「半沢直樹」ですらみてないんですよ。なんか、土下座をさせたり復讐させたり、そういうキーワードだけ聞いていると、なんか世の中の鬱憤を感じてしまって、見る気になれなかったんですよね。「VIVANT」もちょっと頑張ってたっぽいけど、そっち方面なら絶対海外製の作品の方が面白いに決まってるじゃないですか。なので観てません。

さて、太陽を盗んだ男はかなりぶっ飛んだ作品です。まずジャケが大好きです。内容はというと、とある日本の科学教師が、原爆を作ってしまうところから始まります。荒唐無稽な感じはしますが、ジュリー(沢田研二)の迫真の演技でなんかリアリティを持ってしまいます。予告編にも登場しますが、なんか世の中に不満がありそう(だけど隠している)という役どころは当時のジュリーにピッタリです。危険な香りがします。

さて、もしも自分が原爆を作ってしまったとして、日本政府を相手に何か欲求するとするならあなたは何を請求しますか? ジュリーを追い詰める刑事役には菅原文太。昭和の日本をこれでもかと感じてみてください。

おわりに

助手「船長、船長、起きてください!」
船長「うーん、あと15分」
助手「またこのコーナー再始動するみたいですよ」
船長「もういいよ、やらなくて。寝かしてくれ」
助手「いいから早く起きてくださいよ」
船長「もう俺たち必要ないんじゃない? このコーナーはnoteの告知を流しときゃいいんだよ」
助手「確かにあいつ、ここ10日間で4本もnote書いたみたいですね。最近なんか乗ってきたのかな?」
船長「どうせ暇なんだろ?」
助手「ところでこの船、今どこにいるんですかね? 52号も進んできたから、きっと遠くまで来てますよ」
船長「ちょっと外を見てみるか。うーんと・・・」
助手「よくわからないけど、港に『제주』って書いてますね」
船長「うーん、どこかわからんな」
助手「わからんけど、こりゃどう見てもハングルですよ。ということは韓国沖にいるのか。てか、全然進んでないじゃないですか。世界を見ようって言ってるのに、まだ隣の国にいますよ」
船長「俺、実はちょっと韓国語できるんだよ」
助手「すごい、ちょっと聞かせてください」
船長「じゃあ船の甲板から叫んでみるよ。『X로 흘러 오는, 지루한 만화 읽어 버리는 왜?』」
助手「なんて言ってるんですか?」
船長「『왜 아직 마스크를 지참해야 하는 병원이 있나요?』」
助手「ねえ、なんて言ってるの? わかんないから不安なんですけど」
船長「大丈夫、いいこと言ってるから。『생크림은 불법 약물로 인정해 주었으면 한다!』」
助手「だから何それ?」
船長「大丈夫、世の中に一石を投じてるから!『내가 옛날 사귀고 있던 제일 미인의 그녀, AI와 같은 얼굴을 하고 있었지만, 혹시 성형이 아닌가?』」
助手「だからなんて言ってるの??」
船長「思いの丈を話してるだけだよ。ああ、スッキリした」
助手「ねえ、なんて言ったの?」

(つづく)

無料で「楽園の地図」をメールでお届けします。コンテンツを見逃さず、読者限定記事も受け取れます。

すでに登録済みの方は こちら

誰でも
楽園の地図55号 旅の間の体調管理について、クリニックさんに本気で聞い...
読者限定
楽園の地図54号 シンガポールは巨大な植物園と・・・
読者限定
楽園の地図53号 バンコク・オンヌットは普段着でいれる街
読者限定
楽園の地図51号 ヘルシンキに存在しないもの
読者限定
楽園の地図50+1/2号 休憩中(2017年のソウルの写真)
読者限定
楽園の地図祝50号! 過去回を振り返るアニバーサリー
読者限定
楽園の地図49号 田中伶さんー30代からの、自分を思い出す旅のススメ
読者限定
楽園の地図48号 ブロガーまえちゃんとまったり「ワーホリ」トークしなが...